3期から作画が変わったのに、実は原作ファンの多くが「前より好き」と言っています。
2024年4月4日に放送開始したTVアニメ『ゆるキャン△ SEASON3』は、1期・2期を手がけたC-Stationから、エイトビットへとアニメーション制作会社が変わりました。これに伴い、監督・キャラクターデザイン・シリーズ構成という主要スタッフがほぼ全員入れ替わるという、ファンにとって非常に衝撃的な事態が起きたわけです。
なぜ制作会社が変更されたのか、その理由として主に4つが挙げられています。
- 制作スケジュールの都合:C-Stationは年間1〜2本ほどのペースで制作を行う比較的小規模なスタジオであり、2024年放送に向けたスケジュール調整が難しかったとされています。
- 契約内容の問題:1期から映画版までの契約が満了し、3期については新たな契約を締結できなかった可能性が指摘されています。
- 映画版への評価:2022年7月に公開された『映画 ゆるキャン△』は、ゆるい日常感を期待していた一部ファンからは不評の声も上がりました。この結果が制作体制見直しのきっかけになったとも言われています。
- 予算の問題:人気作品として評価が高まる一方、制作会社との予算交渉がまとまらなかった可能性も否定できません。
つまり、単一の原因ではなく複数の要因が重なった結果だということです。
制作会社のエイトビットは、『転生したらスライムだった件』『ヤマノススメ』『ブルーロック』など、躍動感のある作品を多数手がけてきた実績のあるスタジオです。規模・実績ともにC-Stationを大きく上回る会社への移行であり、スケジュール面での安定性が期待されての起用とも考えられます。
ただ、長年ゆるキャン△を支えてきたC-Stationおよび京極義昭監督の不在は、多くのファンにとって心理的なハードルとなりました。これが3期放送前から始まった「賛否両論」の直接的な発端でもあります。
TVアニメ『ゆるキャン△ SEASON3』公式サイト Introduction(監督・スタッフコメント掲載)
3期における最大の変化のひとつが、キャラクターデザインの刷新です。1期・2期でキャラクターデザインを担当したのは佐々木睦美氏でしたが、3期では橋本尚典氏に交代しました。
この変更について、新監督の登坂晋氏は次のようにコメントしています。「『SEASON3』で描く予定の原作漫画のテイストを取り入れたものにしています」。つまり、3期のキャラデザは"劣化"でも"改悪"でもなく、あくろまで原作漫画・あfろ先生の絵柄へ意図的に寄せた結果なのです。
1期・2期のキャラデザは、丸みのある柔らかいラインが特徴的でした。一方3期は全体的にラインがシャープになり、表情の描き方も原作に近い印象になっています。いわば「アニメ的にアレンジされた絵柄」から「原作の空気感を再現した絵柄」へのシフトです。
これが肯定的に受け取られるかどうかは、視聴者の立場によって大きく異なります。
| ファン層 | キャラデザ変更への反応 |
|---|---|
| 原作漫画から入ったファン | 「原作に近くなって嬉しい」「むしろこっちの方が好き」という声が多い |
| アニメ(1期・2期)から入ったファン | 「慣れ親しんだデザインが消えた」「違和感がある」という声が多い |
こうした分断は、作品の人気が高く、しかも長く続いたシリーズであるほど発生しやすい現象です。意外ですね。
1期・2期のデザインを手がけた佐々木睦美氏が引き続き担当できなかった理由は公式から明言されていませんが、制作会社の変更に伴うスタッフ総入れ替えの結果として起きた、いわば必然の変化だったとも言えます。原作ファンにとっては「ようやく漫画に近い見た目になった」と感じる人も多く、必ずしも一方向の評価ではない点が興味深いところです。
3期の作画をめぐる議論の中で、実はキャラクターデザイン以上に評価が分かれたのが背景美術です。3期の背景は、1期・2期と比べて明らかに"実写感"が強まっています。
声優の花守ゆみり(各務原なでしこ役)は、収録の際にこんなコメントを残しています。「完成している絵がアフレコ映像に入っていることもありますが、それが本当に繊細すぎて『写真かな?』って思った話を現場で何度もしていて」。この証言が端的に示すように、3期の背景は写真と見紛うほどのリアルさを持っています。
この背景の変化には、登坂監督チームによる徹底したロケハンが背景にあります。東山奈央(志摩リン役)によると、「改めてロケハンに行かれたそうです。資料ではなく、登坂監督のチームのみなさんが実際にご覧になったことで感じた現地の空気感や雰囲気が、より繊細に描かれているだろうなと」とのことです。
ただ、この"実写感"については批判的な意見もありました。Filmarksのレビューにも「実写をぼかしただけのような、作画に馴染ませる気のない背景はマイナス」との指摘があり、キャラクターの線画タッチと背景のリアルな質感のコントラスト(ミスマッチ)を不自然に感じる視聴者も一定数存在します。
実はこの背景表現の手法は、エイトビットが以前手がけた『ヤマノススメ』でも採用されているものです。高尾山などの実在の名所を舞台にした同作でも同様のリアル背景が使われており、エイトビットの「得意技」とも言えます。そのノウハウをゆるキャン△に転用したわけですが、前2シリーズとの落差が大きかったために批判につながった側面もあります。
聖地巡礼という観点では、背景のリアル度が上がることは実際にキャンプ地を訪れたくなる動機を高めるポジティブな効果もあります。これは使えそうです。現地の空気感を忠実に再現した映像は、初めてキャンプに興味を持つ人にとって「自分でも行けるかも」という親近感を与えやすいという側面もあるでしょう。
Real Sound映画部「『ゆるキャン△』作画変更にみる"原作リスペクト"の姿勢」(背景美術と聖地巡礼への影響を詳しく分析)
「ゆるキャン△ season3 作画崩壊」という検索キーワードが生まれるほど、3期の作画は物議を醸しました。しかし実際のところ、いわゆる「作画崩壊」——つまり作画が明らかに乱れたり、キャラクターの顔が大きく崩れたりするシーンはほとんど確認されていません。
では、なぜ「崩壊」と感じる人がいたのでしょうか。これは2つの要因によるものです。
① キャラクターデザイン自体の変更を「崩壊」と感じた
1期・2期のデザインを基準とした場合、3期のキャラクターは別人のように見えることがあります。特に志摩リンのキャラクターは、1期・2期のほっこりした丸みのある顔から、よりシャープでクールな雰囲気になりました。これを「別人になった」と捉えるファンが「崩壊」という言葉を使ったケースが多いようです。
② 背景とキャラクターの質感ギャップ
写真に近い背景美術と、アニメ的な線画のキャラクターとのコントラストが強く、視覚的な違和感として「崩壊っぽく見える」ことがありました。これはデザインの優劣ではなく、スタイルの組み合わせの問題です。
あにこれβのレビューでは作画評価は「4.5点(5点満点)」とかなり高い評価も見られます。脚本面への不満が大きかった一方、作画そのものの品質については肯定的な声が多いのが実態です。結論は「崩壊」ではなく「変化」が正確な表現ということです。
こうした状況を踏まえると、3期の作画に対する「ひどい」という評価の多くは、作画の質ではなく「1期・2期のスタイルへの強い愛着」に由来することが分かります。キャンプ聖地巡礼のリアルさや背景美術のクオリティという点では、むしろ過去シリーズを上回る部分もあったと言えるでしょう。
3期の作画変更は単なる「見た目の変化」にとどまらず、『ゆるキャン△』の大きな魅力である聖地巡礼への影響という観点でも注目されます。
3期では精進湖(第1話)、浜名湖グライダースクールをモデルとした高台(第2話)、矢作ダム(第1話)など、山梨・静岡・愛知の実在する場所が新たに多数登場しました。背景の"実写感"が増したことで、「あの場所に自分も行きたい」という視聴者の旅行・キャンプ意欲をより強く刺激しやすくなっています。
実際に3期の放送後、長野・静岡・山梨を中心とした聖地に多くのファンが訪れたという報告がSNSでも相次ぎました。これは1期放送時(2018年)に起きた「アウトドアブーム」に続く、3期ならではの聖地巡礼ムーブメントと言えます。
背景が美しければ聖地への関心が高まる。それがゆるキャン△の公式なのかもしれません。
また、作画面での変化が生み出した独自の強みとして見逃せないのが、新キャラクター・土岐綾乃(声:黒沢ともよ)と中津川メイ(声:天野心愛)の存在です。3期から登場した2人は、新しいキャラクターデザインと違和感なく馴染んでおり、3期ならではの作画スタイルが新鮮な印象として機能しています。
これまでのシリーズとの比較で評価が下がりやすい3期の作画ですが、「初見の視聴者」にとっては十分に完成度の高いアニメであることも忘れてはなりません。1期・2期未視聴のまま3期から入ったファンの多くは、むしろ素直に楽しめたという声も多く見られます。
なお、さらに先のシリーズとして、『ゆるキャン△ SEASON4』が2027年放送決定しており、制作はフリュー・ピクチャーズ、キャラクターデザインは宇良隆太氏が担当します。また再びキャラデザが変わることが確定しており、3期から4期への変化も今後注目されるポイントになっています。