円盤売上273枚でも、今なお根強いファンが増え続けているアニメがあります。
『南鎌倉高校女子自転車部』は、松本規之による漫画を原作としたテレビアニメです。2017年1月から3月にかけてAT-X・テレビ神奈川ほかで放送され、全13話(本編12話+特別編1話)が制作されました。アニメーション制作はJ.C.STAFFとA.C.G.Tが共同で担当し、監督は工藤進、シリーズ構成は砂山蔵澄が務めています。
原作漫画は『月刊コミックブレイド』(マッグガーデン)にて2011年8月号から連載が開始され、2018年10月の配信をもって全11巻・全70話で完結した作品です。公式略称は「みなかま」で、ファンの間でも広くそう呼ばれています。
ストーリーは、長崎から鎌倉へ引っ越してきた女の子・舞春ひろみが主人公です。入学式の日に自転車に乗ろうとしたところ、実は乗り方をほとんど覚えていなかったことが判明。極楽寺駅前の坂道で暴走状態になり、そこで同級生の秋月巴と出会います。この偶然の出会いをきっかけに、ひろみは巴、比嘉夏海、神倉冬音らと仲良くなり、南鎌倉高校に自転車部を新設することを決意します。
自転車部発足に際して学校側が課した条件は、設立後3カ月以内に「実績」を作ること。何が実績になるのかも分からないまま、ひろみたちはナイタークリテリウム(夜間の自転車レース)への参加や木崎湖へのロングライド合宿などを通して、自転車の楽しさと仲間との絆を深めていきます。つまり、スポーツの熱血要素と日常系のゆるさが絶妙に混ざり合った作品です。
アニメには途中からアメリカ・コロラド州出身の交換留学生・サンディ・マクドゥガルも加わります。彼女は日本のアニメや漫画に造詣が深く、流暢な日本語を話す元気系キャラクターで、物語に新たな風を吹き込みます。鎌倉という土地の魅力を自転車で走りながら体感できる作品構成は、観光ガイド的な楽しさも兼ね備えています。
📖 Wikipedia:南鎌倉高校女子自転車部(登場人物・スタッフ・ストーリー詳細)
このアニメの声優キャストは、今やアニメ界で活躍する実力派が多数揃っています。主人公・舞春ひろみを演じたのは上田麗奈さんで、透明感のある声質がひろみの純朴なキャラクターと見事にマッチしています。秋月巴役の広瀬ゆうきさんは本作放送当時から多くのアニメに出演しており、落ち着いた知性的なトーンで眼鏡キャラを好演しました。
比嘉夏海役は藤原夏海さんが担当。褐色肌の活発な沖縄出身キャラクターに活き活きとした声をのせています。神倉冬音役の高森奈津美さんは、お嬢様キャラ特有の上品さを丁寧に表現しています。これは使えそうです。
さらに注目したいのが鬼頭明里さんです。森渚(四季の妹でパン屋「BAKERY FLAT」の店員)役として出演しており、本作は鬼頭さんの比較的初期の出演作にあたります。後に『ド級編隊エグゼロス』や『鬼滅の刃』の栗花落カナヲ役で一躍人気声優となった彼女のルーツをこのアニメで感じられるのは、後追いで視聴するファンにとっての密かな楽しみのひとつです。
鳳凰寺ころね役の久保ユリカさんもファン人気が高いキャラクターです。猫耳しっぽをつけた自転車屋兼パン屋の店長という個性的な役どころを、キュートかつコミカルに演じています。声優陣の個性がそれぞれのキャラクターに息吹を与えている点が、本作を繰り返し視聴したくなる要因のひとつと言えます。
| キャラクター | 声優 |
|---|---|
| 舞春ひろみ(主人公) | 上田麗奈 |
| 秋月巴 | 広瀬ゆうき |
| 比嘉夏海 | 藤原夏海 |
| 神倉冬音 | 高森奈津美 |
| サンディ・マクドゥガル | 竹内恵美子 |
| 森四季(顧問教師) | 渡部紗弓 |
| 鳳凰寺ころね | 久保ユリカ |
| 森渚 | 鬼頭明里 |
| 寿鶴 | 加隈亜衣 |
本作の最大の魅力のひとつが、神奈川県鎌倉市を中心とした実在のロケーションを忠実に描いた背景美術です。アニメに登場する「南鎌倉高校」のモデルとなっているのは、神奈川県立七里ガ浜高校です。第1話でひろみが初登校するシーンにも描かれており、実際に校舎の外観がほぼそのまま使われています。
物語の起点となる極楽寺駅は、ひろみと巴が初めて出会った場所として第1話から登場します。関東の駅百選にも選ばれたこの木造駅舎と赤ポストは、現実でも撮影スポットとして人気が高く、聖地巡礼者が絶えない場所のひとつです。江ノ電唯一のトンネル「極楽洞」も作中で描かれており、アニメファンとして訪れると感慨深いものがあります。
七里ヶ浜エリアも本作のメインフィールドです。踏切と海と江ノ電が同時に見渡せる風景は、作中でも印象的なシーンに使われています。七里ヶ浜から見える坂道の頂上では、道の先に海が広がるような絶景が楽しめます。聖地巡礼をするなら、この景色は必ず自分の目で確かめたいところです。
また、「BAKERY FLAT」のモデルとなったパン屋エリアや、ひろみたちが寄る鎌倉市内の史跡・名所も多数登場します。鶴岡八幡宮、由比ヶ浜、江ノ島弁天橋など、1話ごとに異なるスポットが登場するため、全12話を通して鎌倉の観光ガイドとしても機能する構成になっています。鎌倉が舞台のアニメや漫画は他にも存在しますが、「自転車で鎌倉を巡る」という視点で描かれている作品はほかになく、本作独自の強みと言えます。
聖地巡礼を計画する場合、極楽寺駅〜七里ヶ浜駅〜鎌倉高校前駅のエリアをレンタサイクルやロードバイクで走るルートが最もアニメの世界観に近い体験ができます。距離にして約10km程度のコースで、はがき横幅(約14.8cm)100枚を並べたような距離感とイメージするとわかりやすいかもしれません。初心者でも十分に楽しめる平坦〜緩い起伏のルートです。
オープニングテーマはA応P(エーおうピー)が歌う「自転車に花は舞う」です。作詞・作曲は田中シンヤ、編曲は久下真音が担当しています。A応Pはアイドルユニットとアーティストの中間的な活動スタイルで知られており、アニソンとしての完成度が高いこの楽曲はファンから高い評価を得ています。
「自転車に花は舞う」は2017年3月に放送と同時期に、学習塾・臨海セミナーのCM曲としても採用されました。秋月巴役の広瀬ゆうきさんが出演したことでも話題になり、アニメ本編だけでなく外部展開でも存在感を示した楽曲です。鎌倉の空気感を感じさせるさわやかなポップチューンは、サイクリングのBGMとしても実際に活用しているファンが多いとのことです。
エンディングテーマは各話ごとに異なる楽曲が使用されており、キャラクターソングスとしての展開もされています。舞春ひろみ(上田麗奈)、秋月巴(広瀬ゆうき)、比嘉夏海(藤原夏海)、神倉冬音(高森奈津美)など、主要キャラクターたちの個別楽曲が専用のキャラクターソング作品としてリリースされました。音楽面での充実度が高い作品です。
また、2017年には東京・神田にオープンしたサイクルフィットネスバー「CYCLE:HOLIC」とのコラボカフェも開催されるなど、自転車×アニメという組み合わせを活かしたリアルイベントも実施されました。アニメの枠を超えてサイクリング文化と親和性が高い展開がなされており、サイクリスト層にも訴求した珍しい作品といえます。
🎵 ナタリー:A応P、アニメ「南鎌倉高校女子自転車部」OP主題歌「自転車に花は舞う」担当決定のニュース
本作のBD・DVD第1巻の売上は273枚というデータが広く知られており、「爆死アニメ」として語られることもあります。これは確かに商業的には厳しい数字で、2017年冬アニメのなかでも最下位クラスに位置しています。痛いですね。
しかし、円盤売上は視聴者数やファン数を直接反映するものではありません。当時から動画配信サービスや公式無料配信の普及が進んでおり、特にdアニメストアやYouTube公式チャンネルでの視聴者数は一定以上存在しています。実際、YouTube公式に公開されている第1話の動画は2019年時点で再生回数が積み上がっており、サブスクリプション型配信との相性がよい作品であることがうかがえます。
本作の評価が時間とともに変化している点も見逃せません。「ゆるい日常系」「鎌倉の風景が美しい」「自転車の知識が自然に学べる」という観点での再評価が、特にロードバイクをはじめたサイクリング入門者の間で広がっています。弱虫ペダルのような熱血スポーツアニメではなく、「走ることそのものを楽しむ」雰囲気を重視した作品として、自転車女子やゆるキャン系作品が好きな層に刺さる内容です。
もうひとつ特筆すべきは、漫画版の存在です。原作は全11巻・全70話で完結しており、アニメでは描かれなかったエピソードが多数収録されています。木崎湖ロングライド合宿以降のストーリー、ヨーロッパへ渡欧する顧問の森四季先生のその後、各キャラクターの成長など、アニメで本作を知った人は原作漫画を読むことで作品の全貌を楽しめます。アニメだけが「みなかま」ではないということです。
円盤売上が低い作品=つまらない、という判断は早計です。サブスクサービスで手軽に視聴できる今こそ、改めて本作に触れるタイミングかもしれません。
📺 dアニメストア:南鎌倉高校女子自転車部 全13話(配信情報)