スクエニが「社内で検討中」と株主総会で発言しているのに、あなたはゼノギアスを現行機でまだ遊べていないかもしれません。
1998年2月にスクウェア(現スクウェア・エニックス)からPlayStation向けに発売された『ゼノギアス』は、SFと哲学・宗教テーマを大胆に融合させたRPGです。開発期間はわずか約2年。当時のスクウェアは1年半が標準だったため、それでも異例の長さでした。
主人公フェイには「イド」という第二人格が潜んでおり、その存在がストーリー全体の鍵を握ります。人型ロボット「ギア」に乗って戦う戦闘と、重厚な人類創世・宗教的テーマが同居する世界観は、当時のRPGユーザーに強烈な印象を与えました。
国内販売本数は約89万本。当時のスクウェアがFFシリーズ以外に厳しい目を向けていた時代、ミリオン未達とみなされたゼノギアスはチーム解散・続編なしという判断を下されてしまいます。それが今もなおファンの心に刺さっている歴史的背景です。
一方で、作曲家・光田康典氏が手がけた楽曲は今も高い評価を誇ります。エンディング曲「SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~」はゲーム音楽の名曲として知られ、後年もアレンジアルバムやライブ配信イベントが継続的に行われています。2025年2月には発売27周年を記念した約9時間の「Xenogears Music Special Live Stream」が開催されました。
つまり売上こそFFに遠く届かなかったものの、口コミや再評価を経て"知る人ぞ知る名作"として根強いカルト的支持を得ており、それがリメイク待望論の土台を作っているわけです。
ゼノギアスのリメイク議論で必ず挙がるのが、版権問題です。これが原因です。
ゼノギアスのIPはスクウェア・エニックスが100%保有しています。一方で、ゲームを生み出したディレクター・高橋哲哉氏は退社後にモノリスソフトを設立し、現在は任天堂の完全子会社として『ゼノブレイドシリーズ』を手がけています。つまり原作者と版権が別々の企業に属しており、これがリメイク実現に向けた大きな障壁になっているのです。
スクウェア・エニックスがゼノギアスをそのままリメイクすれば「モノリスに作らせろ」という批判が来る可能性があります。逆に、モノリスがリメイクするには版権を持つスクエニの許可が必要で、かつ任天堂プラットフォーム限定になる可能性が高くなります。どちらに転んでもビジネス的に難しい交渉が生じるということです。
| シナリオ | 可能性 | 課題 |
|---|---|---|
| スクエニ単独でリメイク | △ | 高橋氏不参加に対するファンの反発リスク |
| モノリスが版権取得してリメイク | △ | スクエニが版権を手放す可能性が低い・任天堂専売になる可能性 |
| スクエニ+高橋氏がアドバイザーとして参加 | ◎(理想) | 2社間のビジネス交渉が必要・スケジュール調整が困難 |
| HDリマスターのみ | ○ | ディスク2の未完成が放置されるためファン満足度が低い |
2025年8月のファンコミュニティ上での議論でも「スクエニはゼノブレの新作が出るたびにグッズやコンサートで稼いでいるから版権を手放すわけがない」という見方が多く出ています。版権は会社をたたむとき以外には売らないのが業界の慣例であるとも言われており、現実的には「スクエニがリメイクを主導する」形以外のルートは相当に狭い道です。
高橋哲哉氏自身は2017年のKotakuインタビューで「私の選択(ディスク2)は正しかったと思う」と発言しており、ゼノギアスへの後悔を特には示していません。現在のゼノブレイドシリーズへの注力がメインである以上、氏が積極的にゼノギアスリメイクを求める動きをする可能性も低いといえます。
ゼノギアスのリメイク議論において、ディスク2の扱いは最大の焦点です。この問題が解決しないかぎり、ファンは真の満足を得られません。
ディスク1では通常のRPGとして戦闘・フィールド探索・ムービーが楽しめたのに対し、ディスク2ではキャラクターが椅子に座ったまま「その後、われわれは〇〇へ向かい……」と振り返り語りで物語が急展開します。高橋氏はKotakuの取材で「若いスタッフと2年間の開発期間では3D技術習得も重なりスケジュールに遅れが生じた」と正直に語っています。制作費は約200万ドル(当時レートで約2億円前後)で、この限られた予算でゼノギアスの膨大なシナリオを形にしようとした結果でした。
もしリメイクでディスク2を再構築するとなれば、以下のような作業が必要です。
FF7リメイクのように大胆にストーリーを改変する方向も考えられますが、ゼノギアスの場合はもともと「未完の部分を埋めてほしい」という需要が中心です。ファンとしては、原案をベースにした「真のDisc2再現」を切望している声が圧倒的に多いです。
ゼノブレイドシリーズでスクエニと直接の協力関係はないモノリスソフトが参加しない形で、スクエニ側スタッフだけがディスク2を再構築しようとした場合、高橋氏の当時の構想とズレが生じる危険があります。この部分が解決しないかぎりは、ファン向けの完全版は遠い話だということになります。
権威あるゲームメディアAUTOMATONが高橋氏のディスク2発言を詳報しています。
スクウェア・エニックスは近年、過去IPの再活用に積極的です。つまりゼノギアスのリメイク実現ルートは0ではありません。
2023年の第43回定時株主総会では、「FFピクセルリマスターが好評だが、ゼノギアスを含む他の過去作リマスターは予定されているか」という質問に対し、経営陣は「具体的な言及は差し控えるが、社内で様々なアイデアを検討している。今後の発表をお待ちいただきたい」と回答しています。完全否定ではなく、むしろ検討中であるような言い回しでした。
スクエニが採用してきたリメイク・リマスター手法を整理すると、以下の3パターンがあります。
ゼノギアスにあてはめると、「HDリマスターではディスク2未完問題が放置される」「フルリメイクではFF7並みの投資が必要」という板挟みが生まれます。現実的な落としどころはHD-2Dリメイクですが、ゼノギアスのシリアスで重厚な世界観が2Dタッチでマッチするかどうかという問題も残ります。
なお、スクエニは2024年に「量から質への転換」を宣言した中期経営計画を発表しており、乱発より厳選した作品への集中投資方針に転換しています。この流れの中でゼノギアスが優先リストに入れるかどうかが分かれ目です。
【ゲームコラム】スクウェア・エニックスが旧作タイトルのリマスター計画を検討中と株主総会で言及した詳細レポート
リメイクが出なくても、ゼノギアスIPは今も静かに生きています。これは重要なシグナルです。
スクウェア・エニックスのプラモデルシリーズ「ストラクチャーアーツ」では、ゼノギアスのロ