アニメが終わってもペリーヌの物語は終わっていない。
「ペリーヌ物語」を見終えたとき、多くの視聴者が「この後どうなるんだろう」と感じたはずです。結論から言うと、アニメの公式な続編は制作されていません。ですが、がっかりする必要はまったくありません。
原作小説である、フランスの作家エクトール・アンリ・マロの『アン・ファミーユ』(邦題:家なき娘)には、アニメの最終回(第53話)よりもさらに先の展開が描かれています。つまり、アニメはあくまでも原作のダイジェストであり、原作には「ペリーヌがパンダボアヌ家の後継者として成長していく姿」が丁寧に綴られているのです。
アニメ版と原作の最も大きな違いの一つは、物語の始まり方です。アニメは父エドモンが亡くなったボスニアの地から始まりますが、原作ではペリーヌと母マリがパリに到着したところから始まります。つまり、アニメの第1話〜第16話はアニメオリジナルの旅路となっており、原作は第17話以降の展開を反映しています。この旅路パートがあったおかげで、視聴者はペリーヌの強さと母マリとの絆を深く感じ取ることができました。
つまり原作のほうが先にあります。そのため原作には、アニメが終わった後に何が起きたかが書かれているのです。
アニメの物語は第49話でビルフランとペリーヌが涙の再会を果たす感動のクライマックスを迎え、第50話以降はペリーヌがパンダボアヌ家のお嬢様として過ごす日常が描かれます。最終第53話「春の訪れ」では、ビルフランの目の手術が成功し、初めてペリーヌの顔を見たビルフランが感動の涙を流すシーンで幕を閉じます。ここからさらに先の話が、原作には記されているのです。
原作を読むのが「その後」を最も確実に知る方法です。
偕成社による原作『家なき娘』の紹介ページ(原作の概要と刊行情報が確認できます)
ペリーヌが祖父と和解したあと、二人の関係は単なる「孫とおじいさん」を超えていきます。原作では、ペリーヌが祖父ビルフランの仕事の良き相談相手として成長し、パンダボアヌ工場の経営に深く関わっていく様子が描かれています。
注目すべきは、ペリーヌが推し進めた労働環境の改革です。ペリーヌはかつて自分がトロッコ押しの工員として働いた経験から、労働者たちの苦しい生活をだれよりも深く理解していました。その経験を活かして祖父に働きかけ、保育所の設立や労働者のための住宅建設など、次々と改革を実現させていきます。
これは意外ですね。お嬢様になったペリーヌが真っ先に取り組んだのは、贅沢な生活ではなく「工員たちの福祉向上」だったのです。
最終回(第53話)の台詞「保育所が完成し、他の施設も着々と準備が進んでいる」という描写は、この原作の流れをしっかり踏まえたものになっています。アニメの最後の一文は、実は原作のその後と直結していたのです。
ビルフランは、ペリーヌという存在によって、徐々に「儲けのためだけの経営者」から「人を思いやる経営者」へと変わっていきます。頑固で冷徹だった老人がここまで変われたのは、ペリーヌの「人に愛されるには、まず人を愛しなさい」という母の教えを実践し続けた結果でした。
原作では最終的に、ビルフランはペリーヌに工場の未来を託し、安らかに生涯を終えたとされています。ペリーヌという孫娘の存在が、ビルフランの晩年に本当の家族の温かさをもたらした。つまりこれが原作の核心です。
原作の後日談を詳しく解説した記事(ビルフランとの絆、ファブリの関係についても言及あり)
「ペリーヌはいったい誰と結婚するのか」。これはファンの間で長年にわたって語られてきた大きな関心事です。
アニメでも印象的に描かれた誠実な技師・ファブリ。彼はペリーヌが工場の通訳として働いていた頃から、ペリーヌの才能と人柄を誰よりも理解し、支え続けた人物です。原作においても、ペリーヌとファブリの間には特別な信頼関係が描かれており、二人の絆は物語を通じて深まっていきます。
ただし、原作の結末でペリーヌとファブリが「結婚した」と明確に書かれているわけではありません。これが原作の正確な情報です。それでもファンの間で「ペリーヌはファブリと結婚した」という解釈が一般的なのは、物語の最後に「ファブリが彼女を支え続けるであろうことが強く示唆されている」からです。
二人は仕事上のパートナーとして、そして人生のパートナーとして共に歩んでいく——そのような未来が想像できる終わり方になっています。苦難の旅を乗り越え、多くの人に愛と希望を与え続けたペリーヌが、自分を深く理解してくれる人物と結ばれる。それが最も自然な結末と言えるでしょう。
これが基本です。「明確な記述がない」という事実を踏まえつつ、作品の流れから考えるとファブリとの結婚がほぼ確実視されている——というのが原作ファンの間での共通認識となっています。
ここからは少し異なる切り口で、ペリーヌが継いだ工場がその後どうなったかを考えてみましょう。これはファンによる歴史的考察ですが、非常に興味深い内容です。
パンダボアヌ工場のモデルとされているのは、フランス北部・アミアン近郊の実在する街フリュクール(Flixecourt)にある繊維工場です。1840年にスコットランド人のジェームズ・カーマイケルが設立した「聖兄弟工場(Saint Frères)」がモデルと考えられており、ここではジュート(南京袋の素材になる繊維)が生産されていました。
物語の舞台となった1878年から時代を追うと、工場の運命はこうなります。
この歴史的流れで考えると、「ペリーヌは若い頃に繊維産業で大成功を収めたが、晩年にはかつての活気を失っていく街を見つめながら生涯を終えた」という考察が成立します。それでも、彼女が生きた時代のうちに工場は最盛期を迎えており、第一次世界大戦の特需でむしろ荒稼ぎした可能性も十分あります。
意外ですね。戦争によって工場が壊滅すると思いきや、むしろ特需で繁栄したかもしれないのです。
これはあくまでファンによる考察ですが、実際の歴史と照らし合わせたとき、ペリーヌが継いだ工場の命運がリアルに浮かび上がってきます。
Yahoo知恵袋:フリュクールの歴史とパンダボアヌ工場の考察(ファンによる詳細な歴史的分析が読めます)
アニメ「ペリーヌ物語」は全53話あり、感動のクライマックスは第49話「幸せの涙が流れる時」で訪れます。ここでビルフランはペリーヌが自分の孫であることを正式に認め、二人は涙の抱擁を交わします。
注目すべきは、第50〜53話という「後日談パート」が存在する点です。通常の名作劇場ならばクライマックスで完結してもおかしくないところ、「ペリーヌ物語」は4話分もの後日談を描きました。世界名作劇場シリーズの中でこれほど長い後日談を持つ作品は非常に珍しく、「アニメ史上最長クラスの後日談」とも言われています。
この後日談の最大の山場は、第52〜53話で描かれるビルフランの目の手術です。ビルフランには気管支の持病があり、手術中に発作が起きれば「二度と目が見えなくなる、最悪死の危険もある」という高リスクな手術でした。結果は成功し、クリスマスの日に包帯を外したビルフランは、初めてペリーヌの顔を見て大きな感動に包まれます。
厳しいですね。最終回直前まで、命がけのドラマが続いたのです。
また、この後日談では神と教会の存在が大きく描かれているのも特徴です。かつて息子の裏切りによって神も教会も信じなくなったビルフランが、クリスマスの賛美歌に静かに耳を傾け、「もう少し、このまま聞いていよう」と語る場面は、視聴者の心に深く残る名シーンとなっています。ペリーヌがもたらした変化の大きさが伝わってきます。
さらに、1978年という放映年は、元日(1月1日)と大晦日(12月31日)が両方とも日曜日だったため、プロ野球中継や特別番組による休止が一度もなく、全53話が1年間にわたって欠かさず放映されました。これは世界名作劇場シリーズ全作品の中で最も話数が多い記録です。
最終回でペリーヌがサーカス団の少年マルセルと再会し、「今、幸せです」と亡き両親に語りかけるシーンは、第1話からの長い旅の集大成として多くの視聴者の涙を誘いました。
アメブロ:ペリーヌ物語52・53話の詳細レビュー(後日談の丁寧な分析が読めます)
「ペリーヌ物語」には、多くの視聴者が知らない制作上の重大な裏話があります。それは、当初は高畑勲が監督を担当する予定だったという事実です。
高畑勲は「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「あらいぐまラスカル」など、世界名作劇場の人気作品を1年おきに手がけてきた実績ある監督でした。本来は「ペリーヌ物語」でも監督に就任する予定でしたが、タイトルが決定した後に原作に否定的な立場を見せて監督を拒否します。
この影響は非常に大きなものでした。高畑の拒否にともなって、当初参加を見込んでいた小田部羊一(キャラクターデザイン)、そして若き日の宮崎駿なども不参加となり、スタッフの座組みをほぼゼロから作り直すという大変な事態になりました。残ったスタッフは、「あらいぐまラスカル」を制作中だった斎藤博に急遽監督を依頼するところから始めます。
これは使えそうです。「ペリーヌ物語」は宮崎駿が関わっていた可能性があった作品なのです。
また、通常は前年にタイトルが決まり次第、舞台となる現地でロケを行ってから制作に入る日本アニメーションの慣例がありましたが、このトラブルの影響でフランスへの海外ロケを行う余裕がなく、作品の中にフランスのはずがドイツのハイデルベルクの風景に見える場面や、ヨーロッパには生息しないセミの鳴き声が夏の効果音として入っているといった「ミス」が残ることになりました。
しかし完成した作品は、1978年に文化庁こども向けテレビ用優秀映画作品賞を受賞し、今も多くの人々に愛され続けています。逆境の中で生み出された名作が、ペリーヌという主人公の逆境の物語と重なるようで、感慨深いものがあります。
Wikipediaのペリーヌ物語ページ(制作経緯やスタッフの詳細が確認できます)