※2024年9月27日発売
「お兄ちゃんはおしまい。」(通称「おにまい」)は、2023年1月から3月にかけて放送されたTVアニメです。原作の持つ魅力を最大限に引き出すべく、アニメスタッフたちは細心の注意を払いながら制作を進めました。
アニメ制作には多くのスタッフが関わっており、それぞれの専門性を活かしながら作品を作り上げていきます。「おにまい」の制作過程では、特にキャラクターデザイン、脚本・演出、音響制作の3つの分野で独自の工夫が凝らされました。
キャラクターデザインは、原作のイラストを忠実に再現しつつ、アニメーションならではの動きや表情を付け加える重要な作業です。「おにまい」のキャラクターデザインを担当した小田真也氏は、特にまひろの女の子らしい仕草や表情の表現に注力したと語っています。
まひろの髪の毛の揺れ方や目の動き、手の仕草など、細部にまでこだわりを持って描かれています。これにより、まひろの心の揺れ動きや成長過程がより鮮明に表現されることとなりました。
また、みはりのキャラクターデザインでは、天才科学者としての威厳と、まひろの妹としての愛らしさを両立させるデザインが採用されました。眼鏡や白衣といった科学者らしい要素と、かわいらしい表情や仕草のバランスを取ることで、みはりの複雑な性格を視覚的に表現することに成功しています。
脚本・演出面では、原作のコメディ要素を活かしつつ、アニメオリジナルの展開も取り入れることで、視聴者を飽きさせない工夫が施されました。脚本を担当した綾奈ゆにこ氏は、各エピソードでまひろの女の子としての成長を描きつつ、周囲の人々との関係性の変化も丁寧に描写することで、ストーリーに深みを持たせることに成功しました。
特に、まひろと幼なじみの蘭との関係性の変化は、原作以上に丁寧に描かれており、視聴者の心を掴む要因となりました。また、みはりの過去や家族との関係性など、原作では詳しく触れられていなかった部分にも焦点を当てることで、キャラクターの魅力をより引き出すことができました。
演出面では、日常シーンと非日常シーンのメリハリをつけることで、コメディとドラマのバランスを取ることに成功しています。例えば、まひろが女の子の服を着る際の戸惑いや喜びの表現、みはりの発明品が暴走するシーンなど、コミカルな演出と繊細な感情表現が絶妙に組み合わされています。
音響制作は、アニメの雰囲気や感動を左右する重要な要素です。「おにまい」の音響監督を務めた明田川仁氏は、キャラクターの感情変化や場面の雰囲気に合わせた効果音の選定に特にこだわったと語っています。
例えば、まひろが女の子の姿になった直後の戸惑いや混乱を表現するため、心臓の鼓動音や息遣いなどの繊細な効果音を多用しています。また、みはりの発明品が暴走するシーンでは、コミカルな効果音を効果的に使用することで、視聴者の笑いを誘う工夫がなされています。
音楽面では、キャラクターの心情や場面の雰囲気に合わせた楽曲が丁寧に選曲されています。特に、まひろの心の揺れ動きを表現するピアノの旋律や、みはりの発明シーンで使用されるテクノ調の音楽など、場面に合わせた音楽選びが視聴者の感情移入を促す要因となっています。
「おにまい」の魅力を語る上で、声優陣の熱演を忘れることはできません。主人公のまひろ役を演じた高野麻里佳さんは、男性から女性への変化を声だけで表現するという難しい役どころに挑戦しました。
高野さんは、まひろの心の揺れ動きや成長過程を丁寧に表現するため、収録前に原作を何度も読み返し、キャラクターの心情を深く理解するよう努めたそうです。特に、まひろが女の子としての自分を受け入れていく過程での声の変化には、細心の注意が払われました。
みはり役の石原夏織さんも、天才科学者としての冷静さと、まひろへの愛情という相反する感情を声で表現することに苦心したと語っています。みはりの複雑な心情を表現するため、セリフの抑揚や間の取り方に工夫を凝らしたそうです。
声優陣の熱演を引き出すため、音響監督の明田川仁氏は、キャストとの対話を重視したそうです。キャラクターの心情や場面の雰囲気について、声優陣と綿密な打ち合わせを行うことで、より深みのある演技を引き出すことができたと語っています。
「おにまい」の制作過程では、アニメスタッフの独自の取り組みも見られました。その一つが、「おにまいノート」と呼ばれる施策です。これは、毎回の放送後にキャストやスタッフがコメントを書いたノートをアニメ公式Twitterにアップロードするというものです。
この取り組みにより、視聴者はアニメ制作の裏側や、キャストやスタッフの思いを直接知ることができました。また、スタッフ間のコミュニケーションツールとしても機能し、チームの結束力を高める効果もあったそうです。
石原夏織さんは、この「おにまいノート」について、「休憩中も何を書こうかという共通の話ができて、そうした小さなコミュニケーションから、映像のクオリティの高さに感動したことを話しあったり、お互いが出演した作品で『あれがすごく好きだったよ』みたいな話をしたりしていました」と語っています。
このような取り組みは、アニメ制作現場の雰囲気を和やかにし、結果としてより良い作品作りにつながったと言えるでしょう。
「おにまいノート」の詳細については、以下のリンクで確認することができます。
「おにまい」石原夏織インタビュー - アニメハック
以上、「おにまい」のアニメスタッフによる制作秘話や裏話をご紹介しました。キャラクターデザインから音響制作、声優の演技まで、多くのスタッフの努力と工夫が詰まった作品であることがお分かりいただけたでしょうか。
アニメ制作の裏側を知ることで、作品の魅力がより一層深まります。「おにまい」を見返す際には、ここで紹介した制作秘話を思い出しながら、新たな視点で作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。きっと、これまで気づかなかった魅力を発見できるはずです。