鬼平犯科帳の主演・中村吉右衛門は2021年に亡くなっているのに、NHKでは今も新シリーズが制作中です。
二代目中村吉右衛門は、1944年5月22日に東京で生まれました。本名は波野辰次郎。初代中村吉右衛門の孫にあたり、歌舞伎界の名門に生まれた俳優です。1966年に二代目吉右衛門を襲名し、以降は歌舞伎の世界で「播磨屋」の屋号とともに時代劇界を代表する存在へと成長していきました。
テレビドラマの世界では、1989年から2016年まで27年間にわたってフジテレビ系で放送された『鬼平犯科帳』で長谷川平蔵を演じ続けました。これは日本のテレビ時代劇史上でも類を見ない長期シリーズのひとつです。
2021年11月28日、中村吉右衛門は77歳で逝去しました。死因は肺炎と報じられています。晩年は健康上の問題を抱えながらも舞台や映像作品に向き合い続けた姿は、多くのファンの記憶に刻まれています。訃報が伝わると、歌舞伎界・時代劇ファンから大きな悲しみの声が広がりました。
つまり、27年間という歳月が彼と鬼平を同一視させるほどの存在感を生み出したということです。
中村吉右衛門は歌舞伎の世界でも重要な役割を担い、1993年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。歌舞伎と時代劇テレビドラマの両分野で頂点を極めた俳優は、日本の芸能史においても極めて珍しい存在でした。
長年にわたる放送期間中、鬼平犯科帳には多くの個性的な俳優が出演しました。その中で、すでに鬼籍に入られた主要キャストを振り返ります。
まず、長谷川平蔵の同心・木村忠吾を演じたローン・レンジャーこと高橋悦史は、2004年に65歳で逝去しました。渋みのある演技で知られ、シリーズの中盤以降を支えた名脇役のひとりです。
密偵の「おまさ」を演じた梶芽衣子は現在も健在ですが、彼女と長く共演した多岐川裕美らとともにシリーズを彩った密偵チームの中で、一部の俳優はすでに世を去っています。
シリーズ初期から出演していた脇役俳優として特に記憶されているのが、加藤武です。2015年に80歳で逝去した加藤武は、鬼平犯科帳だけでなく、金田一耕助シリーズでも知られる実力派でした。鬼平犯科帳では火付盗賊改方の同心として出演し、劇中に確かな存在感を残しました。
これは見逃せない情報です。
さらに、大滝秀治も鬼平犯科帳に複数回にわたって出演した名優のひとりです。2012年に87歳で逝去した大滝秀治は、時代劇・現代劇問わず活躍し、日本演劇界の重鎮として知られていました。
| 俳優名 | 主な役柄 | 逝去年 | 享年 |
|---|---|---|---|
| 中村吉右衛門(二代目) | 長谷川平蔵(主演) | 2021年 | 77歳 |
| 高橋悦史 | 木村忠吾 役ほか | 2004年 | 65歳 |
| 加藤武 | 脇役・同心 役 | 2015年 | 80歳 |
| 大滝秀治 | ゲスト出演多数 | 2012年 | 87歳 |
| 芦田伸介 | ゲスト・悪役 役 | 1999年 | 76歳 |
シリーズが27年以上続いたことで、出演俳優の数は膨大になります。そのため、亡くなった俳優の数も他の単発ドラマと比べてはるかに多くなるのは自然なことです。長寿シリーズならではの宿命とも言えます。
主演の中村吉右衛門が2021年に逝去したことで、鬼平犯科帳はシリーズとしての大きな転換点を迎えました。フジテレビ版『鬼平犯科帳』は2016年に最終回を迎えており、吉右衛門の逝去後はシリーズそのものが完全に幕を閉じた形となりました。
ただし、鬼平犯科帳という作品そのものが終わりを迎えたわけではありません。意外ですね。
2023年以降、松竹とNHKが連携する形で、松本幸四郎を主演に起用した新たな鬼平犯科帳プロジェクトが始動しました。松本幸四郎は中村吉右衛門の甥にあたる歌舞伎俳優であり、いわば「家の芸」を引き継ぐ形での新シリーズ立ち上げとなりました。これは単なるリメイクではなく、吉右衛門版のDNAを継承した続投プロジェクトとして注目を集めています。
制作サイドが長年のキャスト変更に対してどのように向き合ってきたかという点では、鬼平犯科帳の歴史を振り返ると興味深い事実があります。フジテレビ版の前には、1969年から松竹制作による映画・テレビ版が複数制作されており、そこでは萬屋錦之介が長谷川平蔵を演じていました。萬屋錦之介も1997年に66歳で逝去しており、鬼平を演じた俳優が二人とも亡くなったという事実は、ファンにとっても重く受け止められています。
長谷川平蔵を演じた二人の俳優が亡くなったことが、新シリーズへの関心を高めた面もあると言えるでしょう。
鬼平犯科帳のファンの多くは、「吉右衛門版こそが正統」という認識を持っている方が少なくありません。しかし、実は池波正太郎の原作小説が描く長谷川平蔵の人物像は、吉右衛門版のイメージとはかなり異なる部分があります。
原作では平蔵はかなり大柄で豪快な人物として描かれており、女性関係も奔放です。吉右衛門版では比較的品のある人物像に調整されていたため、原作ファンと映像ファンの間ではしばしば「どちらが本当の平蔵か」という議論になります。これは使えそうです。
また、吉右衛門が健在だった晩年の時期に、すでに後継者を意識した動きがあったという証言も複数残っています。制作関係者のインタビューによれば、主演俳優の高齢化と健康問題は、シリーズ継続の最大のリスク要因として以前から意識されていたとのことです。
さらに注目したいのは、脇役俳優の入れ替わりの激しさです。27年間の放送期間中に出演したゲスト俳優の数は延べ数百人にのぼると言われており、その中には現在では名前すら知られていない俳優も多く含まれています。亡くなったキャストについての情報は、熱心なファン以外にはなかなか届いていないのが現状です。
亡くなったキャストを追いかけるなら、専門の時代劇情報サイトや歌舞伎関係の公式情報が信頼性の高い情報源となります。特に松竹の公式サイトや国立劇場のアーカイブには、出演俳優の詳細な記録が残されており、没年や経歴を確認する際の一次情報として活用できます。
松竹公式サイト(鬼平犯科帳の制作元として俳優情報・公演履歴が掲載)
中村吉右衛門の逝去後、鬼平犯科帳はどのような形で継続されているのでしょうか?
2024年、NHKと松竹による松本幸四郎主演の新『鬼平犯科帳』が放送・公開されました。松本幸四郎(十代目)は1973年生まれで、二代目中村吉右衛門の甥にあたります。幸四郎版では、歌舞伎の伝統的な所作や美意識を取り入れながら、現代的な演出も加えた新解釈が試みられています。
新シリーズの共演陣にも注目が集まっています。吉右衛門版から引き続き出演している俳優はほとんどおらず、ほぼ全面的に新しいキャスティングとなっています。おまさ役や同心たちを演じる俳優陣も一新されており、往年のファンにとっては「別物」と感じる面もあれば、新しい世代のファンを獲得するきっかけにもなっています。
これが現在の鬼平です。
幸四郎版に対するファンの反応は賛否両論であり、SNS上では「吉右衛門さんにはかなわない」という意見と「新しい解釈として楽しめる」という声が交錯しています。長年のファンにとって、吉右衛門版への思い入れの強さが改めて浮き彫りになっているとも言えます。
今後の展開としては、幸四郎版が継続されることでシリーズの裾野がさらに広がる可能性があります。新しい鬼平犯科帳を追いかけるには、NHKの公式サイトや松竹エンタテインメントのキャスト情報ページを定期的にチェックするのが最も確実な方法です。
NHK公式サイト(松本幸四郎版鬼平犯科帳の放送・配信スケジュールの確認に活用)
亡くなったキャストたちが築き上げたシリーズの基盤があってこそ、今の新シリーズが存在しています。そのことを知った上で新旧の鬼平を比べてみると、また違った楽しみ方ができるはずです。鬼平犯科帳というコンテンツの「継承と変化」を追いかけることこそが、長年のファンにとっての最大の楽しみかもしれません。