紅の豚ポルコの声優・森山周一郎の渋い声の秘密

紅の豚の主人公ポルコ・ロッソの声を担当した森山周一郎とは何者か?声帯の驚くべき秘密やキャスト選定の裏話、他の声優陣の素顔まで徹底解説。あなたは声優選びのすべてを知っていますか?

紅の豚ポルコの声優・森山周一郎の渋い声の秘密

森山周一郎はプロの声優ではなく、俳優として舞台を踏んだ人物でした。


この記事でわかること
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ポルコ・ロッソの声優・森山周一郎とは?

本名・大塚博夫。1934年生まれの俳優・声優。洋画吹き替えの黎明期から活躍し、「声帯が二枚半ある」と医師に言われた伝説の低音ボイスの持ち主。

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キャスト選定の意外な裏話

宮崎駿から直接電話でオファーを受けたが、当初は難色を示した森山。娘の一言「断っちゃダメ!」が歴史的なキャスティングを生み出した。

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豪華すぎるキャスト陣の全容

ジーナ役は加藤登紀子、フィオ役は後にONE PIECEのナミ役となる岡村明美、ピッコロおやじ役は当時・桂三枝と、異色のキャスト陣が集結。


紅の豚ポルコ・ロッソの声優・森山周一郎のプロフィール


ポルコ・ロッソの声を担当したのは、俳優・声優・ナレーターの森山周一郎(もりやま しゅういちろう)です。本名は大塚博夫(おおつか ひろお)で、1934年7月26日に愛知県名古屋市に生まれました。活動期間は1954年から2021年まで、実に67年にわたる長いキャリアを持ちます。


もともとは映画カメラマンを目指して上京した森山ですが、日本文化協会の試験官に「変わった声をしてるね」と言われたことをきっかけに、俳優の道へ進むことを決意します。劇団東芸の第1期研究生として入団し、舞台を基盤にしながら俳優・声優として頭角を現していきました。


声の個性は際立っていました。渋みのある低音は、本人によれば「幼稚園のころからこの声」だったといい、病院の検査では医師から「声帯が二枚半ある」と告げられ、死後に標本として永久保存することを勧められたという逸話まで残っています。これは通常の人が2枚の声帯を持つのに対し、1.5倍の声帯があるという異例の身体的特徴を意味します。


つまり、唯一無二の声を生まれ持った俳優だったということです。


1970年代に人気を博した洋画吹き替えでは、ジャン・ギャバン、ャールズ・ブロンソン、テリー・サバラスなどのハードボイルドな俳優を次々と担当しました。特に『刑事コジャック』のテリー・サバラスの吹き替えは大当たりし、サバラス本人と「テリー」「シュー」と呼び合う仲になり、「シュー、俺を日本で有名にしてくれてありがとう」との言葉をもらったというエピソードも有名です。


晩年は2000年代のドラマ「TRICK(トリック)」シリーズの語り部としても活躍。2020年12月に自宅で転倒し大腿骨と腰を骨折、その後2021年2月8日に肺炎で86歳の生涯を閉じました。最後の仕事は2020年放送のNHK連続テレビ小説『エール』の権藤源蔵役でした。


森山周一郎のキャリアと声優業に関する詳細な情報(Wikipedia)


紅の豚ポルコ役への起用と宮崎駿直々のオファーの経緯

『紅の豚』のポルコ・ロッソ役への起用は、宮崎駿監督からの直接電話によるオファーから始まります。ただし、その瞬間の森山の反応は決して積極的なものではありませんでした。


当時の森山は「アニメは子供が見るマンガ」という認識を持っており、宮崎駿のことも知らなかったといいます。電話口で最初に思ったのは「どちらの宮崎さん?」という戸惑いだったとも伝えられています。難色を示しかけたまさにその瞬間、一部始終を聞いていた娘が「お父さん!断っちゃダメ!!」と、普段とまったく様相の違う勢いで止めに入りました。娘のそのリアクションに「何かある」と察した森山は、「はい、分かりました、お伺いします」とオファーを受諾します。


意外ですね。声優の大先輩が宮崎監督を知らなかったのです。


その後、仕事を終えた森山は「知らないとは怖いものである」と振り返っています。作品の完成後には「(宮崎は)引退を発表したが、パートIIを製作しないとストーリーが尻切れトンボのままで完結しない。何とか約束を実行して頂きたいものである」と述べるほど、作品への愛着を深めていきました。


また、この起用が決まる過程には、もう一つの裏話があります。ピッコロおやじの声を担当した当時の桂三枝(現・桂文枝)について、実は森山が宮崎監督に直接「何とかならないでしょうか」と交渉したという経緯があります。落語家の三枝が関西のTV番組で森山に「どうしても吹き替えをやりたい」と相談したのが発端で、森山の仲介により宮崎監督がピッコロの役を大幅に書き足したうえで起用を決めたというエピソードです。


結論は、ポルコの声は偶然と縁の重なりで生まれたということです。


声優陣が明かした『紅の豚』制作の裏話(シネマトゥデイ)


紅の豚の声優キャスト一覧とキャラクターの特徴

『紅の豚』の声優陣は、専業の声優よりも俳優・歌手・落語家が多く起用されたという異色のキャスティングが特徴です。登場キャラクターと担当声優を整理すると、以下のとおりです。


| キャラクター | 声優 | 主な活動 |
|------------|------|---------|
| ポルコ・ロッソ | 森山周一郎 | 俳優・洋画吹き替え |
| マダム・ジーナ | 加藤登紀子 | 歌手・俳優 |
| フィオ・ピッコロ | 岡村明美 | 声優(当時デビュー作) |
| ピッコロおやじ | 桂三枝(現・桂文枝) | 落語家 |
| マンマユート・ボス | 上條恒彦 | 歌手・俳優 |
| ミスター・カーチス | 大塚明夫 | 声優 |
| マルコ(青年期のポルコ) | 古本新之輔 | 声優 |


この中で注目したいのは、マダム・ジーナを担当した加藤登紀子です。主題歌「さくらんぼの実る頃」とエンディングテーマ「時には昔の話を」の歌唱も担っており、声優・歌唱の両面でこの映画に深く関わりました。加藤はアフレコで最も苦労したセリフとして「馬鹿っ!」の一言を挙げており、36回やり直したことをTwitterで明かしています。36回というのは、フィオの「17歳」設定の2倍以上です。


これは使えそうです。キャスト陣の奮闘ぶりが数字で伝わってきます。


フィオ・ピッコロを担当した岡村明美にとって、この作品が声優デビューとなりました。当時は完全な新人だったにもかかわらず、後にONE PIECEのナミ役として2024年現在も続く長期作品の看板キャラクターを担うことになります。さらに、カーチス役の大塚明夫は、その後『ハウルの動く城』の国王役や『魔女の宅急便』の飛行船の船長役などジブリ作品への出演を続けました。


また、青年期のポルコを演じた古本新之輔(現・古本新乃輔)は、のちにラジオパーソナリティとしても活躍します。一方、英語版(米国吹き替え版)ではポルコ役をマイケル・キートン(『バットマン』の俳優)が担当しており、日英で全く異なるアプローチで同じキャラクターが演じられている点も興味深いです。


登場キャラクターと声優の詳細一覧(ハフポスト日本版)


紅の豚ポルコ・ロッソというキャラクターと声の関係性

ポルコ・ロッソの本名はマルコ・パゴット。かつてはイタリア空軍のエースパイロットだったが、自ら魔法をかけて豚の姿になった男として描かれています。真っ赤な飛行艇を操る賞金稼ぎで、赤いネクタイにボルサリーノの帽子・トレンチコートという洒落者でもあります。


宮崎駿監督は本作について「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のための、マンガ映画」と演出覚書に記しており、本作はジブリ作品の中でも大人向けに振り切って作られた映画です。1992年の公開当時、アニメーション映画として史上初めて年間最高興行収入を記録し、最終的に54億円を叩き出しています。これは当時の「魔女の宅急便」の記録を更新した数字で、アニメが子ども向けという固定観念を崩した歴史的な結果でもありました。


森山周一郎の声がポルコに合った理由は明快です。長年ジャン・ギャバンやチャールズ・ブロンソンなどの「渋く・口数が少なく・芯のある男」を演じ続けた経験が、そのままポルコのキャラクター像と重なっていたからです。「飛ばねぇ豚はただの豚だ」という名台詞の重みは、演じた森山の声があってこそ生まれたといえます。


また、ポルコが豚になった理由については、作中で明確に語られません。これは宮崎監督の意図的な選択で、「物語のすべてを説明するのは野暮」という美学から来ています。「戦争で仲間を失った罪悪感」「人間であることの放棄」など複数の解釈が成立するよう、あえて余白が残されています。


キャッチコピーは糸井重里が書いた「カッコイイとは、こういうことさ。」。この言葉が、ポルコとポルコの声を演じた森山の両方に当てはまることは偶然ではないでしょう。


ポルコ・ロッソと森山周一郎の声の魅力を詳述した記事(Real Sound)


紅の豚ポルコ声優・森山周一郎の死後に公開されたドキュメンタリー映画

森山周一郎は2021年2月8日に肺炎で亡くなりましたが、その翌年の2022年10月21日、彼の半生を辿るドキュメンタリー映画『時には昔の話を/森山周一郎 声優と呼ばれた俳優』が公開されました。タイトルは、加藤登紀子が作詞・作曲・歌唱した『紅の豚』エンディングテーマから取られています。


このドキュメンタリーでは、『刑事コジャック』のテリー・サバラス、ジャン・ギャバン、チャールズ・ブロンソンといった世界的名優の吹き替えで独特の低音ボイスを活かし続けた森山の俳優人生が綴られています。加藤登紀子が、ポルコである森山のために改めてレコーディングを行うという場面も収録されました。


この作品を通じて、改めて知られるようになったのが森山の仕事哲学です。舞台出身であったことからNGをほとんど出さなかったこと、声優養成所については「諸悪の根源」と評する一方で、技術より個性を重視した「森山塾」を自ら開校していたことも明らかになっています。後輩育成への思いが、ドキュメンタリーの軸となっています。


また、彼は役者と声優の違いについて「俳優は声優をこなすことはできるが、声優は俳優をすぐやれと言っても難しい」と語っています。自身がまず俳優として骨格を作り、その上に声の演技を乗せるというアプローチが、ポルコ・ロッソという複雑なキャラクターを生き生きとさせた要因の一つでしょう。


声優と呼ばれた俳優、という称号が基本です。


『紅の豚』は2025年5月の金曜ロードショーでの放送でも高視聴率をキープ。1993年の初回放送以来、金曜ロードショーだけで14回放送され、初回の視聴率は20%以上を記録しています。現在も10%以上を維持しているという数字は、この映画が世代を超えて視聴され続けていることを示しています。


ドキュメンタリー映画『時には昔の話を』の詳細情報(DICE+)




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