ケルト民族音楽がルーツのこの曲、実はカポ3を使うと標準コードより指が2本少なく済みます。
「Arrietty's Song」は、2010年公開のスタジオジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』の主題歌です。作詞・作曲はフランス北西部ブルターニュ地方フィニステール出身の歌手兼ハープ奏者、セシル・コルベル(Cecile Corbel)と、サイモン・キャビー(Simon Caby)の共同制作。日本語訳詞は伊平容子が担当しています。
この曲がジブリ史上初めて「海外アーティストによる主題歌」になったことは、あまり知られていません。きっかけは2009年、セシル・コルベルが自ら鈴木プロデューサーに1枚のCDを送りつけたことでした。その熱意がジブリの心を動かし、異例の抜擢につながったのです。
セシル・コルベルは1980年生まれで、思春期にケルト音楽に傾倒し、地元の音楽学校でトラディショナルなケルティック・ハープを習得しました。フランス語だけでなく英語・ドイツ語・ブルトン語・ゲール語・スペイン語でも歌えるという多彩な言語能力を持ちます。その透明感ある歌声と民族音楽的なメロディーが、小人の少女アリエッティの世界観にぴたりと重なりました。
2010年4月7日にシングルとしてリリースされ、オリコン週間チャートで最高38位を記録。ミュージックビデオは2022年時点で1,030万回以上再生されています。シングルのカップリングには英語バージョン「Arrietty's Song (English version)」と「荒れた庭 The Neglected Garden」が収録されており、英語版では歌詞の表現が若干異なります。
✅ つまり、この曲は「ジブリが選んだ」のではなく「アーティスト自らジブリに売り込んだ」という点が大きなポイントです。
参考:セシル・コルベルとArrietty's Song のリリース詳細(ヤマハミュージックコミュニケーションズ公式)
https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/news/detail/220
「Arrietty's Song」のコード進行は、実はとてもシンプルです。基本的に使われるコードは Em・D・G・C・Am・Bm の6種類。これらを組み合わせた繰り返しパターンが曲全体を構成しています。
ギターで弾き語る場合、最もポピュラーな方法がカポ3装着・Emキーでの演奏です。カポを3フレットに付けることで、実音はGmキーになります。これは原曲キー(Gm)に合わせるためで、カポなしでEmのまま弾くと半音3つ分低くなります。カポ3なら「Em→D→G→C」という初心者でも押さえやすいオープンコードを活用できるのが最大のメリットです。
| セクション | コード進行 |
|---|---|
| イントロ・Aメロ | Em → D → Em → D(繰り返し) |
| Bメロ | G → C → D → Am |
| サビ | Em → G → D → C → Am → C → D → Bm |
イントロとAメロは Em → D の2コードを繰り返すだけで成立します。2コードだけで弾けるということですね。ギターを始めたばかりでも、最初のセクションならすぐに弾けるレベルです。
ウクレレで演奏する場合も基本的に同じコード名で対応できますが、ウクレレのチューニング(GCEA)の特性上、コードの押さえ方が異なります。ウクレレでEmを押さえるには薬指と小指を使う一般的な押さえ方が必要ですが、初心者にとっては少し難易度が上がります。代替として、Am → G に移調した初心者向け版(U-FRETの「初心者ver」として公開)を使うと、Em → Gmに変換されたコードで練習でき、指への負担が減ります。
これは使えそうです。最初から原曲キーにこだわらず、弾きやすいキーで始めることが上達への近道です。
参考:コード譜全文・ウクレレ対応(U-FRET)
https://www.ufret.jp/song.php?data=33948
弾き語りで「Arrietty's Song」を演奏するには、歌詞の各フレーズとコードの切り替えタイミングを把握することが欠かせません。ここでは特に重要な冒頭の歌詞とコードの当て方を確認しましょう。
曲は日本語詞と英語詞が混在する構成になっています。オープニングの「I'm 14 years old, I'm pretty(元気な小さいLady)」という英日混合フレーズが印象的です。英語詞はセシル・コルベル本人が書いており、日本語部分は伊平容子の訳詞です。歌詞が1曲の中に2言語入っているのはジブリ主題歌として異例の形式です。
コードの当て方は以下のようになります(カポ3装着・ギター弾き語り想定)。
サビ部分では「髪に感じて(Em)空を眺めたい(G)あなたに花届けたい(D)」という流れで、Em → G → D → C → Am → C → D → Bm と8コードに変化します。サビのBmが最難関です。Bmコードはバレーコードのため、初心者には指が痛く感じることがあります。それでも大丈夫でしょうか?
Bmが難しい場合、一時的に「Bm7(Bマイナーセブンス)」に差し替えることができます。Bm7はBmより指1本少なく押さえられ、サウンドの雰囲気もほぼ変わりません。焦らず段階的に習得するのが基本です。
参考:歌詞全文(歌ネット)
https://www.uta-net.com/song/93192/
「Arrietty's Song」のコード進行が持つ独特の「揺らぎ感」は、ケルト民族音楽の特徴に深く由来しています。この視点から曲を分析すると、コードの使い方の意図が見えてきます。
ケルト音楽の大きな特徴のひとつは「モーダルスケール(旋法)」の活用です。西洋音楽の標準的な長調(メジャー)・短調(マイナー)とは異なる音階で旋律を構成するため、どこか「宙に浮いたような」「土着的な」独特の情緒が生まれます。「Arrietty's Song」では Emを中心としたドリアン旋法的な響き が随所に感じられます。ドリアン旋法とは「短調に似ているが、第6音が半音高い」スケールで、哀愁と明るさが共存する音色が特徴です。
具体的には、Aメロで延々と繰り返されるEm → Dのループがその典型です。通常の短調曲であれば Em → Am へ向かう進行が自然ですが、Em → D(長調のD)へ向かうことでドリアン的な浮遊感が生まれます。これがアリエッティの「床下の小人」という非日常的な世界観にぴったりとはまっています。
この曲のコード進行は「4コード以内で覚えられる」という意外なシンプルさを持ちながら、ケルト音楽のスケール選択によって特別な雰囲気を放っています。つまり、簡単なコードでも「なぜか特別に聴こえる」理由が、旋法の使い方にあるということですね。
ハープ奏者であるセシル・コルベルがこの曲を弾き語りする際はハープをメイン楽器として使用していましたが、ギターに移植した際にもこの「浮遊感」は失われません。アルペジオ(指弾き)で各音を丁寧に鳴らすことで、ストロークよりもケルト的な空気感をより表現しやすくなります。
意外ですね。ただコードを弾いているだけではなく、スケールの選択が「なぜか懐かしい・どこか遠い世界の音楽」という感情を引き出しているのです。
「Arrietty's Song」を弾き語りで通して演奏できるようになるまでの目安は、一般的に合計約10〜15時間の練習です。1日30分・週4日ペースで続けた場合、1ヶ月〜1ヶ月半が目標となります。長い道のりに感じるかもしれませんが、コード数が少ないこの曲は初心者向けジブリ曲の中でも特に取り組みやすい1曲です。
練習は以下のステップで進めるのが効率的です。
コード譜は「楽器.me」や「U-FRET」で無料で確認できます。ただし原曲のキーは Gm(♭2つ)のため、初心者がそのまま弾こうとすると難しいコードが出てきます。必ずカポ3を装着してEmキーで弾く設定にしましょう。カポタストは1,000〜1,500円程度で購入できるため、早めに用意しておくことをおすすめします。
参考:ギターコード習得の目安時間(ギター東大)
https://guitar-todai.net/column/songs-for-beginners/