佐倉綾音がオーディション合格を知ったとき、実は泣き崩れていた。
内山昂輝(うちやまこうき)は、1990年8月16日生まれ、埼玉県出身の声優・俳優です。身長は176cmで、所属は劇団ひまわり。声優デビューは2001年と、実はキャリアが20年以上に及ぶベテランです。
デビューから間もない2005年には、ゲーム「キングダム ハーツ II」でロクサス役を担当し、一躍注目を集めました。それ以来、幅広い作品のメインキャラクターを担ってきた実力派です。
代表作は非常に多岐にわたります。
- 🎮 「キングダム ハーツ」シリーズ(ロクサス・ヴェントゥス役)
- 📺 「機動戦士ガンダムUC」(バナージ・リンクス役)
- 📺 「ハイキュー!!」(月島蛍役)
- 📺 「僕のヒーローアカデミア」(死柄木弔役)
- 📺 「呪術廻戦」(狗巻棘役)
- 📺 「鬼滅の刃」(累役)
- 📺 「ブルーロック」(糸師凛役)
落ち着いたトーンの低音ボイスが特徴で、儚げな少年から冷酷な悪役まで幅広く演じられる点が評価されています。蛍火の杜へへの出演は2011年のことで、その前年あたりからテレビアニメの主演級の役を次々と獲得していた時期と重なります。
つまり、蛍火の杜へのギン役は内山昂輝の飛躍期における重要作のひとつ、ということですね。
参考:内山昂輝さんの出演情報・代表作一覧(アニメイトタイムズ)
https://www.animatetimes.com/tag/details.php?id=684
蛍役の佐倉綾音(さくらあやね)は、1994年1月29日生まれ、東京都渋谷区出身の女性声優です。現在は青二プロダクションに所属しており、2010年の声優デビューから現在まで第一線を走り続けています。
実は、佐倉綾音が声優を目指したきっかけは「体力をつけたかったから」という意外な理由です。幼いころから身体が弱かったため、習い事を通じて総合的な体力をつけようと劇団に入ったのがすべての始まりでした。劇団でボイストレーニングの授業を受けた際に、講師から「声の仕事をした方がいい」とアドバイスされたことで声優を意識したといいます。
さらに小中学生時代に不登校を経験したという過去も持ちます。その苦しかった時期にラジオ放送と出会い、「ここを切り抜けた先で人とは違うものを手に入れて誇れる自分になる」という強い気概を持ち続けたとのことです。
蛍火の杜へのオーディションに臨んだ時点では、デビュー翌年でまだ17〜18歳という新人に近い時期でした。しかも佐倉綾音は、以前から緑川ゆきのファンであり、原作コミックスを自ら購入して所有していたほどの熱狂的な作品愛の持ち主です。
公式アフレコレポートには、佐倉綾音のコメントとして次のような言葉が残っています。「オーディションを受けられるだけでも幸せだと思っていたのに、まさか役をいただけるなんて、すごく嬉しかったです」という感想は、当時の彼女の驚きと喜びをそのまま伝えています。
デビューからわずか1〜2年でメインヒロインを獲得した佐倉綾音の実力は、当時から際立っていたといえます。これは意外ですね。
参考:蛍火の杜へ アフレコレポート(公式サイト)
https://www.hotarubi.info/special/report01.html
蛍火の杜へは、日本のアニメとしては非常に珍しい「プレスコ」という収録方法を採用しています。プレスコとは「プリ・スコアリング(Pre-scoring)」の略で、先に声だけを収録してから、その音声に合わせてアニメーションの絵を作っていく手法のことです。
日本のアニメの99%以上は「アフレコ」方式です。つまり、映像が先に完成し、その後に声優が映像に合わせて声を当てる方法が一般的なのです。これに対し、プレスコは声優がより自由に、台本上の感情を「そのまま」演じられるというメリットがあります。声のリズムや息づかい、間(ま)のとり方が映像よりも先に確定するため、キャラクターの内面がより自然に声へと反映されやすいのです。
内山昂輝と佐倉綾音は、公式アフレコレポートによれば「プレスコを経て、本作の収録に臨むのは二度目」であったと記録されています。つまり、ほぼ完成した映像に対して行われた収録の前に、すでにプレスコでの収録が一度行われていたということになります。
この二段階の収録プロセスが、声優たちの演技をより深く作品に根付かせる効果をもたらしたと考えられます。内山昂輝は「今回、アフレコするにあたってほぼ完成した映像を見せて頂いたのですが、本当にキレイな美しい仕上がりでした」とコメントしており、完成映像を見たことで演技への確信も深まったようです。
プレスコが使われる作品はほかにも「火垂るの墓」などが知られています。この手法を選んだこと自体、制作陣の作品への強いこだわりを示しています。
参考:プレスコ(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%B3
内山昂輝がギンというキャラクターを演じるうえで最も頭を悩ませたのは、「表情が読めない」という点でした。仮面をつけているギンは、原作漫画においても顔の表情がほとんど描写されません。喜びも悲しみも、仮面の奥に隠されている存在です。
このことについて、内山昂輝はインタビューで「ギンは大半仮面を被っていて原作を読んでも表情が読めないので、これはどうしようかと思いました。でも俗世間的な悩みや執着を持たないような感じがしたので、熱情的なしゃべり方ではなく、淡々というか冷静な感じでセリフを言っていこうかなという方針を立てました。そして蛍と出会うことで気持ちが揺らいでいくというのを出せればいいなと思いました」と語っています。
また、ギンは「人間でも妖怪でもない、どちらでもない存在」という特殊な設定を持っています。この「異質感」をどうやって声で表現するかが、内山昂輝にとっての最大の挑戦だったのです。
一方の佐倉綾音は、蛍を6歳の幼少期から高校生、そして映画オリジナルの高校卒業後まで、1人で演じ切ることが求められました。声のトーン・感情表現・息づかいをすべて年齢に合わせて変化させなければならないという難題です。
佐倉綾音は「蛍は無邪気で、その無邪気な部分を残しつつ成長していきます。そこは声だけじゃなくてどういう風に内面を変えたらいいんだろうと、この蛍をやる上で悩みました」とコメントしています。
当時新人声優に近かった佐倉綾音が、これほど幅の広い演技を1人でこなしたことは、後の彼女の大活躍を予感させるものでした。演技の幅広さが条件です。
参考:内山昂輝・佐倉綾音インタビュー(アニメイトタイムズ)
https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1306682435
蛍火の杜へは、公開から間もなく国際的な評価を受けます。2011年、スコットランドで開催されたアニメイベント「Scotland Loves Animation 2011」において審査員賞を受賞しました。これは日本国内にとどまらず、海外からもその完成度が認められたことを意味します。
さらに翌2012年1月には、国内最高峰の映画賞のひとつである「第66回毎日映画コンクール」でアニメーション映画賞を受賞。これを記念して、シネ・リーブル池袋(東京)とテアトル梅田(大阪)でのアンコール上映も決定しました。
ここで注目すべきなのは、蛍火の杜への上映時間がたったの44分だという点です。一般的な映画の半分にも満たない時間でありながら、これだけの高評価を獲得したのです。44分という長さは、例えて言えばテレビアニメ1話(約24分)の約2本分程度。それでも「短すぎる」と感じさせない密度の高い物語と演出が評価されました。
この作品が高い評価を得た背景には、内山昂輝と佐倉綾音という2人の声優の好演はもちろん、夏目友人帳で知られる制作会社ブレインズ・ベースと監督・大森貴弘をはじめとするスタッフ陣の力が大きく関わっています。制作陣がほぼ夏目友人帳と同じメンバーで構成されており、緑川ゆき作品の空気感を深く理解したスタッフによる映像化だったことが、クオリティの高さにつながっています。
また、エンディングテーマ「夏を見ていた」を歌うのは、おおたか静流。透き通るような歌声が作品の余韻を一層深め、声優陣の演技と相まって多くの視聴者の涙を誘いました。結論は、声優・スタッフ・音楽の三位一体が生み出した名作です。
参考:毎日映画コンクール アニメーション映画賞 受賞報道(文化庁)
参考:映画「蛍火の杜へ」毎日映画コンクール受賞ニュース(コミックナタリー)
https://natalie.mu/comic/news/62899