PS2版のボイスを引き継いでいると思ったら、声優が全員入れ替わっていて買い直した人が続出しています。
『グリムグリモア OnceMore』は、2007年にPS2向けに発売されたヴァニラウェア開発の魔法ファンタジーRTS(リアル・タイム・シミュレーション)を、2022年7月28日にPS4およびNintendo Switch向けにリマスターした作品です。開発はヴァニラウェア、発売は日本一ソフトウェアが担当しています。価格はパッケージ版・ダウンロード版ともに5,478円(税込)で、PS2版とは異なる現行プラットフォームで手軽に遊べる形になりました。
PS2版は2007年リリースということもあり、現在では中古入手のみになっています。一方のOnceMoreはPS4・Switchの両プラットフォームで正規販売されており、体験版も配信されたことから、現在グリムグリモアをプレイするならOnceMore版が実質的に唯一の選択肢と言えます。つまり、現行版がOnceMoreです。
ゲームの根本的な内容——魔法学校「銀の星体の塔」を舞台に、少女リレ・ブラウが繰り返される5日間の謎を解くというストーリー、グリモア(魔導書)の力で使い魔を召喚して戦うRTSシステム——はオリジナル版から変わっていません。ただし、OnceMoreでは見た目・音・ゲーム性のいずれにおいても大幅なアップグレードが施されています。
開発の経緯として知られているのが、ヴァニラウェア代表・神谷盛治氏のエピソードです。PS2版はヴァニラウェアが開発費を全額負担した自社リスクのタイトルで、開発中に完全に資金が尽きたという経緯がありました。OnceMoreのリマスター化はその精神的な「恩返し」と「メインプログラマーへの労い」という側面も持つ、異色の背景を持つ作品です。
ファミ通によるヴァニラウェアへのインタビュー記事(開発秘話・スキルツリー発案の理由など)
OnceMoreで最も注目すべき新要素の一つが「大魔法」システムです。戦闘中に使用できる4種類の強力な魔法で、広範囲の敵をまとめて焼き払う「マナバースト」や、傷ついた味方を回復させる「リザレクション」などが実装されています。発動回数には制限があるため、使い放題というわけではありませんが、「詰んだ」と感じた局面で逆転できる切り札として機能します。
これはRTSを初めて遊ぶプレイヤーへの「救済措置」として設計されたものです。ヴァニラウェアのプログラマー・金山晃久氏によれば、「どうしようもない状況になったとき、ほんのちょっとだけ踏ん張れる要素」として追加されたとのこと。RTSというジャンル自体が難易度高めに感じられがちなので、これは使えそうです。
もう一つの新要素が「スキルツリー」です。各ステージには通常の勝利条件とは別に「ミッション(課題)」が設定されており、それをクリアすることで獲得できるコインを使って魔法陣や使い魔を強化できます。強化内容はプレイヤーが選択でき、コインは払い戻しも可能なので、何度でもやり直して自分好みのカスタマイズが楽しめます。
PS2版では成長要素がストーリーの進行に固定されていたため、誰がプレイしても基本的に同じ攻略になってしまっていました。スキルツリーの追加によって、OnceMoreでは「自分だけの戦略を組み立てる楽しさ」が生まれています。ステージ後半になるほどミッション難度も上がり、コイン報酬も増えるため、やりこみ要素としても機能します。スキルツリーが原則です。
GAME Watch掲載のOnceMore新システム詳細解説(大魔法・スキルツリー・ギャラリー機能)
PS2版とOnceMoreの違いの中で、「知らずに購入すると驚く」ポイントがキャスト面です。OnceMoreではゲーム内ボイスが全て新規収録されており、PS2版から声優が完全に一新されています。主人公リレ・ブラウのCVは佐伯伊織さん、マルガリタ・フローズンは花井美春さん、ガンメル・ドラスクは関輝雄さん、アドヴォカートは手塚ヒロミチさんといった面々です。
声優が変わった理由には、ゲーム開発の歴史的背景があります。PS2版の制作当時、ヴァニラウェアは資金難に陥っており、音楽制作会社・ベイシスケイプの協力を得て「PS2版のみ使用可能」という限定条件のもと、費用を抑えてキャスティングを実現していました。そのため今回のOnceMoreでは、ライセンス上の制約から新規録り直しとなったのです。
加えて、OnceMoreではドラマパートのボイスに留まらず、戦闘中にもリレや仲間のボイスが新たに追加されています。PS2版では戦闘中の会話音声が乏しかったため、戦場の臨場感がOnceMoreでは大きく向上しています。意外ですね。
PS2版のキャストに愛着を持っているファンにとっては「声が違う」と感じる場面もあるかもしれません。ただ、OnceMore版のキャストも高い評価を得ており、プレイした多くのユーザーから「新ボイスも魅力的」という声が聞かれます。どちらが優れているというよりも、「別の解釈による同じ物語」として楽しむのが良いでしょう。
グラフィック面では、解像度がPS2版のちょうど2倍にHD化されています。ヴァニラウェアの特徴であるアニメ的で緻密なビジュアルが、現代のモニターでより鮮明に映し出されるようになりました。また、画面比率が4:3から16:9のワイドスクリーンに変更されたことで、RTS特有の盤面全体の把握がしやすくなっています。
もっとも、16:9への変更に伴って単純に横に引き伸ばしたわけではありません。UIは全面的に修正され、背景の描き足しや会話シーンのアニメーション修正・テクスチャ整備といった対応も丁寧に行われています。一部の素材はヴァニラウェア内で消失していたため、そこは新たに作り直す必要もあったとのことです。
利便性の面では、戦闘中・ドラマパート両方で使える「早送り機能」と「戦闘中セーブ機能」が追加されています。これが実は非常に重要な変更点です。PS2版では長いステージで1時間近くかかる場合もあり、ゲームオーバーになると全てやり直しというケースが発生していました。OnceMoreでは戦闘中にセーブできるため、中断して後から再開することが可能です。
さらに、ハード難易度のバランスがPS2版より難しい方向に調整されています。PS2版のハードに物足りなさを感じていた上級者にとっても、OnceMoreのハード難易度は歯ごたえのある内容になっているため、再プレイ時も楽しめます。これは使えそうです。
| 比較項目 | PS2版(オリジナル) | OnceMore版 |
|---|---|---|
| 解像度 | PS2相当 | PS2版の2倍(HD化) |
| 画面比率 | 4:3 | 16:9(ワイドスクリーン) |
| キャストボイス | PS2版限定収録 | 完全新規録り下ろし |
| 戦闘中ボイス | なし | 追加あり |
| 大魔法 | なし | 4種類追加 |
| スキルツリー | なし | ミッション報酬で強化可能 |
| 早送り機能 | なし | あり |
| 戦闘中セーブ | なし | あり |
| ギャラリー機能 | なし | 90枚以上のイラスト |
| ハード難易度 | 通常設定 | 難しく再調整 |
日本一ソフトウェア公式サイトのシステム紹介ページ(OnceMore版の機能を全て確認できる)
OnceMoreには「ギャラリー機能」という新要素も追加されています。PS2版・OnceMore版双方のために制作されたイラストが閲覧可能で、ヴァニラウェアのスタッフが手がけた合計90枚以上のイラストが収録されています。ストーリーを進めていくたびにギャラリーが解放されていく仕組みになっており、クリアに向けたモチベーションの一つになります。
90枚以上というのは、単純計算でB4サイズの紙を並べると畳2畳分ほどのボリュームになるイメージです。ヴァニラウェアのアートワークは高い評価を得ており、ゲームの世界観をじっくり味わいたいプレイヤーにとってはうれしい要素です。
また、ゲーム内に「ストラテジーノート」という攻略本的な機能も追加されています。RTSに不慣れな初心者でも戦略を学べるようになっており、「RTS初心者のプレイヤーを、ゲーム性が損なわれないようにサポートする」という開発目標を体現したものです。まずはストラテジーノートを確認するのが原則です。
PS2版をすでにクリアしている人が改めてOnceMoreを楽しむ理由としては、①新しいキャストによる演技の違いを楽しめる、②スキルツリーによって以前とは異なる攻略アプローチが試せる、③ギャラリーで世界観のアートを堪能できる、という3点が特に大きいです。単なる「画質向上版」にとどまらないことがわかります。
PlayStation公式ブログのOnceMore発売日記事(追加要素の概要と開発コメント)