初代アニメを「黒歴史」と思っているあなた、実はその評価がリメイク版の失敗で逆転し、今や再評価の声が続出しています。
「仙界伝 封神演義」は、1999年7月3日から同年12月25日にかけてテレビ東京系列で放送されたテレビアニメです。制作はスタジオディーン、全26話構成で、監督は西村純二が担当しました。原作は藤崎竜によるジャンプ漫画『封神演義』で、1996年から2000年まで週刊少年ジャンプで連載されていた作品です。
重要なのは放送タイミングです。アニメ放送が始まった1999年の時点で、原作漫画はまだ連載の途中でした。つまり制作スタッフは原作の結末を知らないまま、26話という限られた枠でアニメを完結させなければならなかったのです。これがのちの大幅な改変につながる根本的な理由でした。
舞台は紀元前11世紀の中国・殷の時代。悪しき仙女・妲己(だっき)に操られた殷の皇帝・紂王が人間界を荒廃させていく中、崑崙山の仙人・太公望が師である元始天尊から「封神計画」を授かり、悪しき仙人・道士たちを封神台に封じていくというのが基本のストーリーです。
このアニメの持つ背景として特筆すべき点があります。放送当時、周囲の90年代アニメと比べても独特の作風を持ち、OPテーマの「WILL」(米倉千尋)が非常に人気を集めました。この曲は作詞を鵜島仁文と米倉千尋の共作、作曲・編曲を鵜島仁文と岩本正樹が担当したもので、25年以上経過した現在もYouTubeで根強く再生されています。EDテーマは同じく米倉千尋が歌う「FRIENDS」で、OP・EDともに楽曲の評価は当時から非常に高かったのです。
仙界伝 封神演義|Hulu公式 - 全26話が視聴可能な公式配信ページ
初代アニメには個性的な声優陣が揃っています。主人公・太公望を演じたのは結城比呂(現・優希比呂)で、少年漫画らしい熱血さを感じさせる演技が特徴でした。妲己役はかかずゆみ、申公豹役には石田彰、普賢真人役には緒方恵美、太乙真人役に阪口大助が起用されるなど、90年代アニメ黄金期を支えた実力派声優がずらりと並びます。
それが基本です。これほど豪華なキャストが揃っているにもかかわらず、作品全体としての評価が当初低かった理由は、原作改変の大胆さにありました。
主要キャラクターごとの変更点を整理すると、太公望は原作の策士的なキャラクターが薄れ、より少年漫画的な熱血主人公として描かれています。楊戩はアニメ独自の設定として元始天尊のスパイ・太公望の監視役という役割が加えられ、原作とはまったく異なる立ち位置で登場します。また黄天化は、原作では煙草を吸うキャラクターでしたが、テレビ放送の規制により木の枝を口にくわえる形に変更されました。これは放送コードの問題であり、制作サイドとしてはやむを得ない対応でした。
一方で、原作では不遇だった雷震子がアニメでは主要キャラクターとして積極的に登場するなど、初代アニメ独自の良い改変も存在します。聞仲(ぶんちゅう)は原作で太公望たちの敵側の人物ですが、アニメの終盤では太公望と共闘するという展開が加えられており、ファンの間ではこの展開を好意的に評価する声も多くあります。
声優一覧を参考として挙げると、哪吒(なたく)CV:宮田幸季、黄飛虎CV:田中一成、元始天尊CV:大木民夫、聞仲CV:松山鷹志、紂王CV:松田佑貴、神鷹CV:川澄綾子、姫昌CV:麦人など、錚々たるキャストが脇を固めています。
仙界伝封神演義|ピクシブ百科事典 - キャスト・スタッフ情報の詳細まとめ
初代「仙界伝」が原作と大きく異なる最大の理由は、漫画の連載が続いている途中でアニメが作られたことです。放送が始まった1999年の時点で、漫画は全23巻のうちまだ中盤にさしかかったばかりでした。制作側は原作の結末を知らず、26話というテレビの枠内で物語を完結させる必要がありました。つまり後半はほぼ完全なアニメオリジナル展開です。
原作改変の内容は多岐にわたります。漫画版の大きな見どころである趙公明や十天君との壮大な戦いは、尺の都合から完全にカットされました。また漫画の後半で明かされる太公望の正体をめぐる「大どんでん返し」も、初代アニメでは一切描かれていません。作者の藤崎竜自身がこのアニメを「メタメタ封神演義」と評したという逸話も残っており、原作者自身がアニメとの違いを認識していたことが伺えます。
その結果、漫画ファンからは「別物だ」「黒歴史にしてほしい」という声が当時から多く上がりました。これはある意味では当然の反応でした。しかし一方で、アニメ単体として見た場合、限られた26話の中でひとつの物語をまとめ上げようとした構成力や、主題歌の完成度、一部のオリジナルキャラクター描写の巧みさは正当に評価されるべき点でもあります。
ここで注目したいのが2018年のリメイク作「覇穹 封神演義」の存在です。原作が完結してから約18年後に作られたこの作品は、全23話という尺に漫画全23巻分の内容を詰め込もうとしたため、物語が超特急で進み多くのシーンがカットされるという別の問題が発生しました。
覇穹が「大変なことになった」と言われる中、逆説的に「初代仙界伝はアニメとしてちゃんとまとまっていた」という再評価の声が急増したのです。結論として、初代アニメの問題点は原作改変にあったというよりも、「原作と比較すること」が評価を下げる原因だったと言えます。
初代「仙界伝」と2018年の「覇穹 封神演義」を比べると、両者はまったく異なる問題を抱えていたことが見えてきます。これは使えそうな視点です。
「仙界伝」の問題点は、原作未完の段階でアニメ化したためにオリジナル展開が多くなり、原作ファンを裏切ったという点でした。特にキャラクターの性格変更やストーリーの独自解釈が原作ファンの反発を招きました。
「覇穹」の問題点は対照的です。原作が完結してからのアニメ化であるにもかかわらず、全23話という限られた尺に23巻分の内容を詰め込もうとしたため、物語が急ぎ足になりすぎました。重要なキャラクターが活躍する間もなく退場したり、伏線の回収が不完全なまま物語が進むという状況が発生し、アニメ単独の作品としても楽しみにくい結果になりました。
厳しいところですね。両作を比べたファンのあいだでは「どちらがマシか」という議論が今でも続いていますが、「アニメ単体としての完成度」という基準で見ると、オリジナル展開を使いながらも一応の結末を用意していた「仙界伝」を評価する声が増えてきています。
また、この比較を通じて見えてくる重要な事実があります。初代「仙界伝」のOP・ED楽曲の評価は「覇穹」と比べても明らかに高く、米倉千尋の「WILL」「FRIENDS」はいまだにカラオケや動画サイトで定期的に話題になります。音楽的な遺産という観点では、「仙界伝」は間違いなく90年代ジャンプアニメの名盤のひとつと言えるでしょう。
再評価という文脈でいえば、2018年以降にファンになった若い世代が過去作として「仙界伝」を視聴し、「覇穹よりまとまっている」という感想を持つケースも増えています。つまり、リアルタイムでの評価と後年の評価はかなり異なるということです。
新旧に賛否両論の「再アニメ化」3選|マグミクス - 仙界伝と覇穹の比較評価が詳しく読める記事
初代「仙界伝 封神演義」は現在、複数の動画配信サービスで視聴が可能です。Huluでは全26話が見放題で配信されており、dアニメストアでも視聴できます(月額660円・初月無料)。またU-NEXTでも配信されているほか、バンダイチャンネルでも対応しています。長らく配信・DVD-BOX再販が行われていない「幻の作品」とされていた時期もありましたが、2018年の「覇穹」放送終了後から状況が一変し、現在は複数のサービスで手軽に視聴できるようになっています。これはいいことですね。
| 配信サービス | 配信状況 | 料金目安 |
|---|---|---|
| Hulu | 見放題 | 月額1,026円(税込) |
| dアニメストア | 見放題 | 月額660円(税込)・初月無料 |
| U-NEXT | 見放題 | 月額2,189円(税込)・31日間無料 |
| バンダイチャンネル | 配信あり | 月額1,100円(税込) |
今からこの作品を見るなら、「原作漫画の再現度を評価するアニメ」としてではなく、「1999年に作られた独自の封神演義」として楽しむのが最もおすすめの視聴スタンスです。原作ファンであれば「ここが漫画と違う」という発見を楽しみながら見ることができますし、アニメから入った人は純粋に90年代ジャンプアニメの空気感を味わえます。
特に第1話から12話あたりまでの前半は、原作の主要エピソードである哪吒(なたく)の陳塘関編や黄飛虎の離反など、比較的原作に沿った展開で進むため、世界観の理解がしやすくなっています。後半の独自展開が苦手な方は前半だけでも十分に楽しめる内容です。
また初代アニメを見た後で原作漫画に触れると、アニメでは描かれなかった趙公明や十天君との壮大な仙界大戦、そして太公望の正体にまつわる衝撃的な真実を味わえます。アニメをきっかけに原作漫画へ進む、という楽しみ方も非常におすすめです。原作漫画は全23巻で完結しており、電子書籍サービス(KindleやeBookJapanなど)でも購入・閲覧が可能です。
仙界伝 封神演義|Hulu公式 - 今すぐ全26話を視聴できる公式ページ