「ブルーウォーター」はNHKではなく、ガイナックスが実質制作したアニメの主題歌です。
「ブルーウォーター」は、1990年に放送されたNHKアニメ『ふしぎの海のナディア』のオープニングテーマとして誕生した楽曲です。作詞は来生えつこ、作曲は井上ヨシマサ、編曲はジョー・リノイエが担当しています。
歌詞の全文は以下のとおりです。曲の構成としては2番まであり、フルサイズでは最後に転調があるため、テレビサイズしか知らない方は驚く構成になっています。
| ブロック | 歌詞 |
|---|---|
| Aメロ(1番) | 弱気な人は嫌い 青空裏切らない 夢見る前に私 飛んで行きたい |
| Bメロ(1番) | 心のオルゴールが 開いてく響いてく 少しずつの幸福 勇気も 奏で出すの |
| サビ(1番) | 今 君の目に いっぱいの未来 言葉は永遠のシグナル DON'T FORGET TO TRY IN MIND 愛はjewelより すべてを輝かす |
| Aメロ(2番) | 口笛吹いて君に 街角合図したら 笑顔で悩みすべて 吹き飛ぶ感じ |
| Bメロ(2番) | 見つめ合えば自然に 分かり合う許し合う 騒がしい人波の まん中歩いたって 今 限りなく 青く透き通る 心が空よりも鮮やか 今 限りなく 愛したい未来 お互い感じるよ |
| サビ(2番) | 心のオルゴールが 開いてく響いてく 少しずつの幸福 勇気も 奏で出すの 今 君の目に いっぱいの未来 言葉は永遠のシグナル DON'T FORGET TO TRY IN MIND 愛はjewelより すべてを輝かす |
| 大サビ(ラスト) | 今 君の目に いっぱいの未来 言葉は永遠のシグナル DON'T FORGET TO TRY IN MIND 愛はjewelより すべての恋人たちに 輝きを つたえて 抱きしめたい 君を… |
テレビ放送で流れるのは1番のAメロ〜サビのみの「TVサイズ」です。フルサイズはこの倍以上の長さがあり、最後の「すべての恋人たちに 輝きを つたえて 抱きしめたい 君を…」というラストへの流れは格別です。これが基本です。
歌詞カードや歌詞サービスで全文を確認する際は、フルサイズ版を意識して読むと曲の構成が理解しやすくなります。
参考:歌詞全文と詳細情報(歌ネット公式)
森川美穂「ブルーウォーター」歌詞ページ|歌ネット
この楽曲の歌詞のなかで、もっとも長年にわたって議論されてきたのが英語フレーズ「DON'T FORGET TO TRY IN MIND」です。意外ですね。
「DON'T FORGET(忘れないで)」「TO TRY(挑戦することを)」「IN MIND(心の中で)」という要素に分解できますが、英語の文法として見ると「in mind」の使い方がやや特殊で、ネイティブスピーカーからも「どういう意味?」という反応が出るフレーズとして知られています。
つまり「文法的には少し不自然な英語」ということです。
一般的な解釈としては、以下のようなものが提案されています。
- 💡「心の中で挑戦することを忘れないで」
- 💡「その気になってやることを忘れないで」
- 💡「心に問いかけることをやめないで」
このフレーズは作詞家・来生えつこによるものですが、公式な意味解説は発表されておらず、聴く人それぞれの解釈に委ねられています。これはむしろ、1990年代J-POPのアニソン歌詞において「英語を音の響きとして使う」という手法の典型例でもあります。
来生えつこといえば「さよならは言わないで」「夢の途中」など数多くの名作歌詞を手がけたベテラン作詞家で、意図的に解釈の幅を持たせた可能性も十分あります。「言葉は永遠のシグナル」という直前の一行と合わせて読むと、「言葉が届くかどうかは心の持ち方次第」というメッセージが浮かびあがってくるとも読めます。
この英語フレーズの意味は「正解なし」が条件です。
深読みするほど味わいが増すフレーズで、30年以上経った今でもファンの間で語り継がれているのはそのためです。
参考:「DON'T FORGET TO TRY IN MIND」の意味についての解説記事
ことのは魔術師|「DON'T FORGET TO TRY IN MIND」の意味を考察
歌詞の内容は、作品の主人公・ナディアの心情と成長を投影しているように読める構造になっています。これが原則です。
「弱気な人は嫌い 青空裏切らない」という歌い出しは、強がりで孤独を抱えるナディアの性格そのものを映し出しています。人間不信で動物たちとのほうが心を開けるナディアが、旅を通じてジャン・マリー・グランディスたちと関わるうちに少しずつ変化していく——その成長の軌跡が「心のオルゴールが 開いてく 響いてく」という表現に込められています。
歌詞の意味をナディアの物語に照らし合わせると、以下のような対応が見えてきます。
| 歌詞フレーズ | ナディアの物語との対応 |
|---|---|
| 弱気な人は嫌い 青空裏切らない | 強がりで人間不信のナディアの性格 |
| 夢見る前に私 飛んで行きたい | 一人で故郷を探そうとしていた姿勢 |
| 心のオルゴールが 開いてく 響いてく | 仲間たちとの出会いによる心の変化 |
| 少しずつの幸福 勇気も 奏で出すの | 旅の中で育まれていく感情 |
| 愛はjewelより すべてを輝かす | 愛が宝石(ブルーウォーター)よりも大切という結論 |
特に注目すべきは「愛はjewelより すべてを輝かす」という一節です。作中でナディアが持つ神秘の宝石「ブルーウォーター(Blue Water)」は、主題歌のタイトルそのものですが、歌詞のなかで「愛はjewelより輝く」と宣言することで、宝石よりも人と人との絆が大切だというメッセージを込めているとも解釈できます。
タイトルに作中アイテム名を据えながら、歌詞では「その宝石より大切なもの」を語るという構成は、来生えつこらしい奥深い仕掛けといえます。
「愛が最上位」というメッセージが基本です。
ちなみに2番の歌詞「見つめ合えば自然に 分かり合う 許し合う」「今 限りなく 愛したい未来 お互い感じるよ」という部分は、ナディアとジャンの関係性の発展を思わせる内容になっており、アニメを見た後で歌詞を改めて読むとまた違う感動があります。
参考:歌詞とナディアのキャラクター解説
【歌詞考察】ふしぎの海のナディア ブルーウォーター|Izmeel アニソン考察ブログ
「ブルーウォーター」は森川美穂の12枚目のシングルとして1990年4月25日に東芝EMI / EASTWORLDからリリースされました。曲の長さはフルバージョンで4分4秒です。
オリコンチャートでの最高順位は17位でしたが、森川美穂のシングルとしては2012年時点で最多売上を記録している代表作です。当時のチャート順位だけで判断すると過小評価になります。
制作スタッフは下記のとおりです。
- 🎵 作詞:来生えつこ(「夢の途中」「さよならは言わないで」などで知られる大御所作詞家)
- 🎵 作曲:井上ヨシマサ(アニメ・特撮の楽曲を数多く手がけるベテラン作曲家)
- 🎵 編曲:ジョー・リノイエ・鈴川真樹
- 🎤 歌:森川美穂(本楽曲が東芝EMI移籍後初のシングル)
この曲にはもう一つの重要な特徴があります。それは「イントロがなく、いきなりボーカルから始まる」という構成です。「弱気な人は嫌い」という歌い出しが曲の冒頭から来るため、テレビ画面でOPが始まった瞬間に視聴者を一気に引き込む効果がありました。カラオケで歌おうとすると「どこで入るの?」と戸惑う理由がこれです。
また、フルサイズには曲の終盤に転調があり、最後の大サビ「すべての恋人たちに 輝きを つたえて 抱きしめたい 君を…」は半音上がったキーで歌われます。テレビサイズしか知らない状態でカラオケに挑むと、転調に対応できずに終わってしまうケースが多いのはこのためです。
カップリング曲の「Yes, I Will…」はエンディングテーマとして起用されました。エンディングの作詞は森川美穂本人が手がけており、オープニングの来生えつこ作詞とはまた異なる雰囲気の楽曲に仕上がっています。
曲の受賞歴として注目すべきは、2019年にソニー・ミュージックエンタテインメントが主催した「平成アニソン大賞」の編曲賞(1989〜1999年部門)を受賞していることです。30年近く経ってなお評価される楽曲というのは、それだけ時代を超えた普遍性があるということです。
参考:NHKキャラクターページのブルーウォーター公式情報
ふしぎの海のナディア|NHKエンタープライズ キャラクターページ
「ブルーウォーター」がリリースから35年以上経った現在でも語り継がれ続けているのには、単に「懐かしのアニソン」以上の理由があります。
まず大前提として、「ふしぎの海のナディア」という作品そのものが持つ独特の立ち位置があります。この作品の総監督は庵野秀明で、後に『新世紀エヴァンゲリオン』を世に送り出す人物です。制作はガイナックスが実質的に担っており、「NHKの子ども向けアニメ」でありながら、大人の鑑賞にも十分耐える深みを持った作品として評価されています。
作品の元ネタはジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」と「神秘の島」ですが、さらに遡ると宮崎駿が1980年代初頭に準備していた企画「海底世界一周」(未来少年コナン2の位置づけ)がベースになっています。その企画が実現せず、宮崎がジブリで「天空の城ラピュタ」として作品化した一方、元の企画からナディアが生まれたという経緯があります。つまりナディアとラピュタは「いとこのような関係」というわけです。
この複雑な制作背景を持つ作品のOPテーマであることが、「ブルーウォーター」の歌詞に対する読み解き方の幅を広げています。
もう一つ重要な点として、このOPの視聴スタイルがあります。エレクトラというキャラクターが「一体ナディアは何を考えて生きているのでしょう」と語る「前回のあらすじ」に続いてOPが流れるという構成のため、「エレクトラがナディアの成長を見守る歌」として受け取るファンも多かったとされています。
歌詞の意味が「ナディアへのエール」として聞こえるのはそのためです。
2007年には森川美穂本人がセルフカバー版「ブルーウォーター (21st century ver.)」をリリースし、現在もライブで歌われる機会があります。また石田燿子、下川みくに、白石涼子、椎名へきるなど多数のアーティストによるカバーが存在しており、2024年8月には森口博子もカバーアルバムに収録しています。これだけカバーされ続けているアニソンは決して多くありません。
これは使えそうです。
歌詞の観点から見ると、「DON'T FORGET TO TRY IN MIND」という謎めいた英語フレーズ、「愛はjewelより」という宝石をメタファーにした表現、そして「言葉は永遠のシグナル」という力強いフレーズが、時代を超えて多くのリスナーに「自分なりの意味」を見つけさせてきました。決まった正解がないからこそ、人々の記憶に長く留まり続けているのです。
参考:ブルーウォーターのシングル情報とカバー歴
ブルーウォーター(森川美穂)|Wikipedia