フランダースの犬の犬種はアニメと原作で全然違う

フランダースの犬のパトラッシュといえばセントバーナードをイメージする人が多いですよね。でも実は原作小説・アニメ・現地銅像で犬種の認識が三者三様なんです。その真相、知っていましたか?

フランダースの犬の犬種はアニメと原作で全然違う

パトラッシュはセントバーナードではなく、あなたが知っている「あの白くてもふもふした犬」は監督の独断で作られたキャラクターです。


🐾 この記事の3つのポイント
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原作の犬種は「ブービエ・デ・フランダース」

パトラッシュのモデルはベルギー原産の大型牧牛犬。アニメの白くてふわふわした犬とは外見がまったく異なり、黒や灰色のもじゃもじゃした毛並みが特徴です。

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アニメのパトラッシュはセントバーナードと和犬を参考にしたデザイン

監督・黒田昌郎が「子供たちに馴染んでもらいやすくするため」にデザインを変更。本来の犬種とは別物のキャラクターとして誕生しました。

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ベルギーの銅像はちゃんとブービエ・デ・フランダース

1986年にホーボーケンに建立されたネロとパトラッシュの銅像は、実際の犬種であるブービエ・デ・フランダースの姿で造られています。


フランダースの犬のパトラッシュの「本当の犬種」とは何か


「フランダースの犬」のパトラッシュと聞いて、多くの日本人がイメージするのは白くてやさしい大型犬の姿でしょう。しかしその姿は、1975年のテレビアニメが作り上げた「創作上のデザイン」にすぎません。


原作小説を書いたのはイギリス人作家ウィーダ(本名:マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー)です。彼女は原作の中でパトラッシュを「フランダース産の大きな労働犬」と表現し、「頭も四本の脚も大きく、耳は狼のようにぴんと立っていて、異常なほど筋肉が発達している」と描写しています。この記述からは、アニメの愛らしいパトラッシュとはまったく異なるイメージが浮かびます。


現在、最も有力な説として挙げられているのが「ブービエ・デ・フランダース」という犬種です。ベルギーとフランスの国境に近いフランドル地方が原産地で、犬種名の「ブービエ」はフランス語で「牛追い」を意味します。体高はオスで62〜68cm、体重は35〜40kgにもなる堂々たる大型犬で、全身が粗くもじゃもじゃとした毛で覆われています。


つまり「パトラッシュ=白くてやわらかそうな犬」というのが読者の常識ですね。しかし実際は、黒や灰色の剛毛に覆われた牧畜犬がモデルなのです。


ちなみに1986年には、ベルギーのホーボーケンにネロとパトラッシュの銅像が建立されました。日本人観光客の問い合わせがあまりにも多かったためです。その銅像のパトラッシュは、しっかりとブービエ・デ・フランダースの姿をしています。ベルギーを訪れた際にアニメの姿を期待していると、かなり驚くことになるでしょう。


ベネッセ「ブービエ・デ・フランダースの特徴・性格・飼い方(獣医監修)」
※ブービエ・デ・フランダースの体高・体重・毛色・性格・飼い方を獣医師監修のもと詳しく解説しています。


フランダースの犬アニメのパトラッシュがセントバーナードに似ている理由

なぜアニメのパトラッシュはあのような外見になったのでしょうか?


答えはシンプルです。1975年に放送されたテレビアニメ「フランダースの犬」の監督・黒田昌郎が、ブービエ・デ・フランダースの写真を見て「これはパトラッシュのイメージと大きく違う」と感じ、デザインを変えることを決断したのです。黒田監督は「子供たちに馴染んでもらいやすくするため、セント・バーナードや和犬を参考にデザインした」と後に語っています。


これは大切な点です。パトラッシュのあのデザインは、原作に忠実ではなく、日本の子どもたちの親しみやすさを最優先にした結果として生まれたものでした。


セントバーナードといえば、フランスとスイスの国境に位置するアルプスの山岳地帯で、雪崩や遭難者を救助する犬として知られています。首元に樽をつけた救助犬のイメージが根付いており、温かみのある大型犬として日本でも高い知名度を持ちます。その穏やかでやさしい印象がパトラッシュのキャラクター設定にもマッしたと考えられます。


さらに和犬の要素も加えることで、日本人が親しみを感じやすいパトラッシュが完成しました。これは創作上の判断として理にかなっていました。最終話の視聴率は30.1%を記録し、これは世界名作劇場の全シリーズの中でも最高視聴率です。アニメ史に刻まれる名場面が生まれた背景には、こうした細やかなキャラクターデザインの工夫もあったのでしょう。


意外ですね。あの感動的なラストシーンを支えたパトラッシュのデザインは、原作を大きく離れた「日本オリジナル」だったわけです。


ブービエ・デ・フランダースの実際の特徴と原作パトラッシュとの比較

実際のブービエ・デ・フランダースはどんな犬なのか、原作に描かれたパトラッシュと照らし合わせながら見ていきましょう。


まず外見について。ブービエ・デ・フランダースは全身をやや粗く硬い被毛が覆っており、顔まわりには特徴的なあごひげと眉毛状の毛があります。毛の長さは約6cm程度で、羊毛状や巻き毛状にはならず「やや乱れ毛」と表現される独特のテクスチャーです。毛色はブラックやグレー、グレー・ブリンドルなど濃い色が中心で、白い個体はほとんどいません。


これが基本です。体高はオスで62〜68cm、メスで59〜65cmほど、体重はオスで35〜40kgに達し、成犬はかなり大柄に感じます。身長170cmの大人の腰あたりにちょうど頭が来る高さです。


原作のパトラッシュも「耳が狼のように立っていて、脚が外側に開いてがっしりしている」と描写されており、立ち耳で筋肉質なブービエの特徴と一致する部分があります。ただし、原作の記述はアニメのパトラッシュよりもブービエに近い姿を想像させるものです。


性格の面では、ブービエ・デ・フランダースは飼い主と家族への忠誠心が非常に強く、穏やかで落ち着いています。賢く辛抱強い点はまさにパトラッシュさながらです。頑固な一面もあり、しつけは子犬の頃からしっかり行う必要があります。現在では番犬・警察犬・作業犬としても活躍しており、ペットとしても飼われています。


ブービエ・デ・フランダースを実際に飼う場合、1日2回・1時間以上の散歩が必要で、週に1〜2回の丁寧なブラッシングが欠かせません。毛がどんどん伸びるため、定期的なトリミングも必要です。日本の夏の暑さは苦手で、室内飼育が適しています。飼育環境に関する詳細なアドバイスは、専門家に相談することをおすすめします。


ジャパンケネルクラブ(JKC)「ブービエ・デ・フランダース犬種標準」
※JKC公認の犬種標準書です。体型・毛色・性格・用途について公式情報を確認できます。


フランダースの犬アニメの犬種がセントバーナードではない理由と3説まとめ

「パトラッシュの犬種は何なのか?」という問いには、実は3つの異なる立場があります。それぞれを整理しましょう。


🐾 ①原作(小説)の立場
ウィーダの原作にはパトラッシュの犬種名が明記されておらず、「フランダース産の大きな労働犬」としか記述がありません。耳が立っていて脚が外側に広がり、筋肉が異常に発達している、という外見描写のみが頼りです。この記述からはブービエ・デ・フランダースが最も近い候補とされていますが、ベルジアン・タービュレンなど別の犬種の可能性も研究者の間では指摘されています。


🐾 ②アニメの立場
1975年の日本アニメ版では、監督・黒田昌郎がセントバーナードと和犬を参考にしてパトラッシュをデザインしました。このため「パトラッシュ=セントバーナードっぽい犬」というイメージが日本全国に定着しました。ただしこれはあくまでアニメ版のオリジナルデザインであり、特定の犬種を正式に設定しているわけではありません。


🐾 ③ベルギー現地の立場
1986年にホーボーケンに建立されたパトラッシュの銅像はブービエ・デ・フランダースの姿で作られています。現地では「パトラッシュ=ブービエ・デ・フランダース」という認識が一般的です。ブービエ・デ・フランダースが正式に犬種登録されたのは1912年のことで、16世紀のフランドル地方を舞台にした原作の時代とは異なりますが、地域的なつながりから最も有力なモデルとされています。


結論は「三者三様」です。どの立場も「絶対的な正解」ではなく、それぞれの文脈で語られているのが実情です。これを知っておくと、ベルギー旅行でパトラッシュの銅像を見たときや、原作小説を読み直したときの理解が深まります。


フランダースの犬アニメを楽しむための独自視点:ベルギーでの受け取られ方の意外な事実

「フランダースの犬」は日本では誰もが知る名作ですが、じつは舞台であるベルギーではほとんど知られていませんでした。これは意外な事実です。


原作を書いたウィーダはイギリス人で、物語の舞台となったアントワープはベルギーの都市です。しかしイギリス人作家が書いた「ベルギーが舞台の物語」であるため、ベルギー国内では原作の知名度がほとんどなかったのです。さらにベルギー国内では内容の評価も芳しくなく、日本のアニメ版も現地では放送されませんでした。


転機が訪れたのは1975年以降のことです。日本のアニメが放送されて人気を博し、ネロとパトラッシュの舞台を訪ねようとする日本人観光客がアントワープに押し寄せるようになりました。問い合わせがあまりにも多くなったため、1986年にホーボーケンにネロとパトラッシュの像が設置されたほどです。


これは使える情報です。ベルギー旅行を計画する際、アントワープにある聖母大聖堂(アントウェルペン聖母大聖堂)は「フランダースの犬」の最終話でネロが最期を迎えた場所です。実際に内部にはルーベンスの2枚の傑作絵画「キリスト昇架」と「キリスト降架」が展示されており、観光名所にもなっています。


また1975年のアニメ放送の際、最終話の視聴率は関東地区で30.1%を記録しました。これは世界名作劇場50年以上の歴史の中で最高視聴率です。放送後には視聴者からの「助命嘆願」の手紙がフジテレビに大量に届き、局側は対応に苦慮したと伝えられています。あの最終話がいかに社会現象に近いインパクトを持っていたかがわかります。


さらに2010年には、日本アニメーションが世界名作劇場放送35周年を記念して「パトラッシュ基金」を設立し、盲導犬育成支援事業を開始しました。パトラッシュの名前を冠したこの基金は、アニメが社会貢献活動にも繋がった例として注目されます。


Wikipedia「フランダースの犬(アニメ)」
※アニメの視聴率、スタッフ情報、原作との相違点など詳細な資料として参照できます。




アニメ フランダースの犬 【講談社英語文庫】