UBWから見始めても、実はFateの核心を8割以上理解できてしまいます。
「Fate/stay night」は2004年にTYPE-MOONが開発したビジュアルノベルゲームを原点とする作品です。物語は「聖杯戦争」という、7人の魔術師(マスター)が歴史上の英雄(サーヴァント)を使い魔として召喚し、すべての願いを叶える聖杯を争う戦いを描いています。
この原作ゲームには3つのシナリオルートが用意されており、それぞれ独立したストーリーと結末を持ちながら、同じ舞台・同じ登場人物が並行世界(パラレルワールド)として描かれています。つまり、1つのルートで起きた出来事は「もしもの歴史」として扱われ、別のルートの出来事とは矛盾しません。この構成こそが、Fate/stay nightを1度見ただけでは全体像をつかみにくくしている理由の一つです。
| ルート名 | ヒロイン | 通称 | アニメ形式 | 制作 |
|---|---|---|---|---|
| Fate(無印) | セイバー | セイバールート | TVアニメ全24話(2006年) | スタジオDEEN |
| Unlimited Blade Works | 遠坂 凛 | 凛ルート | TVアニメ全26話+OVA(2014〜2015年) | ufotable |
| Heaven's Feel | 間桐 桜 | 桜ルート | 劇場版3部作(2017〜2021年) | ufotable |
まず無印ルートは、主人公・衛宮士郎がサーヴァントのセイバーと出会い、聖杯戦争を戦い抜く「王道の成長物語」です。Fateシリーズ全体の世界観・用語・聖杯戦争のルールが丁寧に説明されており、入門編として非常に優れたシナリオです。ただし、アニメ化されたのは2006年と古く、現代の作画水準に慣れた視聴者には最初の数話でハードルを感じるかもしれません。
次にUnlimited Blade Works(UBW)は、ヒロインが同級生の魔術師・遠坂凛に変わり、彼女のサーヴァントであるアーチャーと士郎の対立が物語の核になります。士郎が「正義の味方になる」という理想を貫く一方、アーチャーはその理想の行き着く先を知っている存在として士郎の前に立ちはだかります。これが基本です。テーマを一言で言えば「理想と現実のぶつかり合い」です。
最後のHeaven's Feel(HF)は、後輩の間桐桜をヒロインとし、3部作の劇場映画として公開されました。聖杯戦争の裏に隠された闇と真実が掘り下げられ、士郎がこれまでのルートとは異なる選択をする、感情的な重さが突出したシナリオです。ufotable制作の映像美と梶浦由記の音楽、AimerによるエンディングテーマがHFを映画作品として完成させています。
3つのルートはそれぞれ「王道」「理想と現実」「救済と代償」という異なるテーマを持っており、3つ全部を見て初めてFate/stay nightという1つの大きな物語が完成する設計になっています。知っておけば損しない情報です。
参考:ufotableによるUBWをFateシリーズ入門として推薦している詳細解説記事
AV Watch「"Fate"はufotable版UBWから観るのがオススメ!」
Unlimited Blade Worksには、知らない人が多い重要な事実があります。実は「UBW」というタイトルを持つアニメ作品が2種類存在しており、それぞれ内容・作画・シナリオの深さが大きく異なります。
1本目は2010年1月23日に公開された、スタジオDEEN制作の劇場版アニメです。上映時間は106分で、原作ゲームのUBWルートをダイジェスト的にまとめた内容になっています。原作シナリオの監修は行われておらず、恋愛描写なども大幅にカットされています。時間が限られているため、ストーリーが駆け足で進む印象が強く、初見の方には登場人物の関係性や心情の変化が伝わりにくい作品です。ただし、戦闘シーンのクオリティは高く評価されており、短時間でUBWの大筋を確認したいコアなファン向けのダイジェストとして機能しています。
2本目は2014年〜2015年にかけて放送された、ufotable制作のTVアニメシリーズです。0話のプロローグを含む全26話+OVAで構成されており、総視聴時間はおよそ10時間にのぼります。こちらは原作者である奈須きのこ氏がシナリオ監修に参加しており、原作ゲームにはない追加シーンが多数盛り込まれています。特に重要なのが最終話後の「時計塔シーン」で、すべての戦いが終わった後の士郎と凛がイギリスの魔術協会「時計塔」でどのような道を歩むかが描かれる点です。この点はDEEN版には一切存在しないシーンで、ufo版だけの大きな魅力です。
作画面での差も明確です。ufo版はアクションシーンに定評のあるufotableの作画で、士郎とアーチャーの決闘シーンや宝具展開のシーンなどが圧倒的なクオリティで描かれています。さらに、ヒロインである遠坂凛のキャラクター掘り下げも豊富で、凛が士郎に惹かれていく過程やアーチャーへの複雑な感情が丁寧に描写されています。また、アーチャーが笑う有名なシーンはufo版のTVシリーズにしか存在しません。
つまりufo版が基本です。初見の方は迷わずufo版(全26話)を選んでください。DEEN版の劇場版は「すでにUBWを知っているファンが短時間で振り返りたい場合」に限って有効な選択肢です。
| 比較項目 | DEEN版(劇場版) | ufo版(TVアニメ) |
|---|---|---|
| 公開・放送年 | 2010年1月 | 2014〜2015年 |
| ボリューム | 106分(約1時間46分) | 全26話(約10時間) |
| シナリオ監修 | なし | 奈須きのこ氏が参加 |
| 追加シーン | なし | 時計塔シーンなど複数 |
| 恋愛描写 | ほぼなし | 丁寧に描写あり |
| 初心者向け度 | △(玄人向けダイジェスト) | ◎(強くおすすめ) |
参考:DEEN版・ufo版の違いを詳しく解説した記事
アニメガフォン「【Fate/stay night】UBWのアニメ・劇場版の違いは?どちらを見るのがおすすめ?」
UBWを楽しむうえで、アーチャーと衛宮士郎の対立関係を理解しているかどうかで、感動の深さが変わります。これは他のルートにはない、UBWだけの核心です。
物語の中で、遠坂凛のサーヴァントであるアーチャーは最初から士郎に対して敵意に近い態度を示します。同盟を組みながらも、アーチャーは士郎の「正義の味方になる」という理想を「子どもの夢だ」と冷笑し続けます。なぜそこまで士郎に執着するのか?その理由がUBWの核心です。
アーチャーの正体は、別の時間軸を生きた「未来の衛宮士郎」です。正義の味方という夢を信じ続けたまま生き、戦い、最終的に自分自身の理想によって消耗しきった存在がアーチャーです。彼は英霊となった後も、自らの存在を消去するために「かつての自分(士郎)を殺すこと」で世界との契約を果たそうとします。これはデメリットとも言えるほど歪んだ手段です。
つまりUBWは、「理想の自分との戦い」という非常に哲学的なテーマを持つルートです。士郎はアーチャーとの対決の中で、それでも理想を諦めず「今の自分として前へ進む」という答えを出します。一方でアーチャーは、士郎が違う結末に辿り着く姿を見て、ある種の救いを感じながら消えていきます。この点がUBWが多くのファンから「少年漫画的で熱い」と評される理由です。
凛との関係性も重要です。士郎が「幸せになるために」夢を追いかける点、つまりアーチャーとの決定的な違いは「凛の存在」にあります。note上の考察記事でも「凛がいる限り士郎がアーチャーになることはない」と分析されています。この関係性の積み重ねがあるからこそ、ufo版の凛描写の豊富さがストーリー理解に直結しています。
参考:士郎のルートごとの心理変化を考察した読み応えのある記事
note「歪なプログラムと硝子の心。Fate/stay nightにおける衛宮士郎」
「どの順番で見ればいいのか分からない」というのは、Fate初心者が最もよく抱える悩みです。結論から言えば、以下の順番が最も多くのファンやメディアが推奨している黄金ルートです。
最初にUBWを見る理由は、世界観の説明が最も親切だからです。主人公の士郎が魔術師ではなく一般人に近い存在であるため、凛やセイバーが「聖杯戦争とは何か」「サーヴァントとは何か」を士郎に教える場面が自然な流れで描かれます。視聴者がそのまま士郎と一緒に学べる構成になっているわけです。
次にFate/Zeroを見る理由があります。Fate/Zeroは時系列的にはstay nightの10年前を舞台にした「前日譚」ですが、原作小説はstay night発売後に書かれており、扱いは「スピンオフ」です。UBWでstay nightの世界観をある程度把握した後に見ると、登場人物の背景や動機がより深く理解できます。
初心者が失敗しやすいのは「時系列順(Zero→stay night)で見ようとするパターン」です。Fate/Zeroは確かに時間軸的には先ですが、stay nightを知っている前提で作られている部分が多く、先に視聴すると設定の意味が半分しか伝わりません。これは意外ですね。
Heaven's Feelを最後に見ることにも重要な意味があります。HFは3部作の劇場映画で、士郎とセイバーの出会いシーンがオープニングで字幕なしに流れる演出が取られています。これはFate/stay nightを視聴済みのファンを対象にした演出で、初見で見ると士郎が何を捨てたのかが全く伝わらない構成です。
無印(DEEN版2006年)については、「UBW・Zero・HFを見終えた後に、もっとFateが見たいと思った場合」に選ぶのが最適です。DEEN版はFateルートをベースにしながらオリジナル要素が混在しており、ufotable版と比較することでFateの奥深さをさらに味わえる作品となっています。
3つのルートを「ヒロインが違うだけ」と思って視聴している人は少なくありません。しかし実際には、3ルートは「衛宮士郎がどのような選択をするか」という観点から設計されており、ヒロインの違いはその選択の結果として現れます。この視点を知っているかどうかで、UBWの楽しみ方が根本から変わります。
無印ルートの士郎は「全員を救いたい」という広い理想を持ち、セイバーとともに聖杯戦争を勝ち抜こうとします。しかし最終的には「全員を救う」という理想そのものの矛盾に直面します。UBWルートの士郎は「正義の味方になる」という理想を諦めず、しかし未来の自分(アーチャー)と戦うことで「今の自分として前に進む」という決断をします。HFルートの士郎は「間桐桜だけを守る」という、それまでとはまったく異なる選択をします。これが条件です。
この3つの選択はそれぞれ「犠牲を伴う普遍的な正義(無印)」「理想を追いながら現在を生きる覚悟(UBW)」「たった1人のために世界と向き合う愛(HF)」というテーマに対応しています。
UBWだけ見てアーチャーの存在に感銘を受けた方には、他のルートを見ることで同じ「衛宮士郎」という人物がまったく別の結末に辿り着く様子が見られます。アーチャーはUBWでのみアーチャーとして士郎の前に立ちますが、無印ルートでは士郎がセイバーを選んだ結果、アーチャーは異なる未来に辿り着いていることが示唆されています。いいことですね。
3ルートの視聴が完了したあとには、「Fate/Grand Order(FGO)」というスマートフォン向けRPGをプレイするという楽しみ方もあります。FGOには原作者・奈須きのこ氏がシナリオを直接手がけた章が複数あり、その章が配信された際には売上がV字回復するほどの反響を呼びました。stay nightで培ったサーヴァントや世界観の知識があると、FGOのシナリオがより深く楽しめます。FGOはApp StoreやGoogle Playで無料でダウンロードできます(一部課金あり)。
また、UBWをすでに視聴済みで原作のビジュアルノベルに興味が出た方には、現在スマートフォン向けアプリ版「Fate/stay night Realta Nua」が配信されています。原作ゲームの膨大なテキスト量はアニメの数倍に及び、アニメでは描ききれなかった士郎やアーチャーの内面描写が丸ごと楽しめます。まずアプリで検索してみることをおすすめします。
参考:Fateシリーズ全体の見る順番をわかりやすく解説した記事
ファミ通「アニメ『Fate』の見る順番を解説。おすすめは?」