アリアハンから始まるこの物語、実は主人公アベルの声優・古谷徹が「ヤムチャと同じ声」と気づかずに見ていた視聴者が多数いたことが判明しています。
物語の舞台はアリアハンという田舎の村です。元気な少年・アベルと発明好きの少女・ティアラ、そしてふとっちょで怪力の少年・モコモコの3人が共に15歳の誕生日を迎える日から、この壮大な冒険が幕を開けます。
誕生日を迎えたティアラは、赤い石の首飾りをプレゼントされます。実はこの首飾り、ただのアクセサリーではありません。ティアラが「赤き珠の継承者」であることを示す神聖なものでした。一方でアベルも「青き珠の勇者」であり、グロウ族の末裔という宿命を背負っていることが第1話から示唆されます。
ふたりは村の近くにある竜神湖の底に沈んでいた石板を発見します。その石板には「赤い玉が竜を蘇らせ、青い玉が竜を封印する」という竜の伝説が刻まれていました。つまり結論は、ティアラの持つ赤き珠こそが物語のすべてのカギということです。
石板の発見と時を同じくして、村の上空に巨大な浮遊要塞が突如現れます。バラモスの配下であるムーアが率いる軍勢が村を急襲し、ティアラを連れ去ろうとするのです。アベルはティアラを守るために飛行船に乗り込みますが、中にいた大魔王バラモスの不思議な力に歯が立たず完全に敗北。なんとか脱出することには成功したものの、ティアラは連れ去られてしまいました。
こうしてアベルは幼なじみのティアラを取り戻すため、そして世界を救うため、友人モコモコとともに旅立ちを決意するのです。これが全話の出発点です。
| 登場人物 | 役割・特徴 | 声優 |
|---|---|---|
| アベル | 青き珠の勇者・グロウ族の末裔 | 古谷徹 |
| ティアラ | 赤き珠の聖女・ボーン族の末裔 | 勝生真沙子 |
| モコモコ | 力持ち・怪力の幼なじみ | 桜井敏治 |
| バラモス | 大魔王・世界征服を企む | 渡部猛 |
| ムーア | バラモスの側近・魔法の使い手 | 柴田理恵 |
本作がどのような経緯で生まれたかを知ることで、1話の重要性がさらに際立ちます。意外ですね。
1989年当時、漫画やアニメがゲーム化されることはよくありましたが、テレビゲームがアニメ化されるのは非常に珍しいケースでした。ドラゴンクエストIII(1988年発売)が社会現象となるほどの大ヒットを記録し、その勢いを受けてエニックス・フジテレビ・NASの共同制作でアニメ化が実現したのです。
制作体制も豪華でした。キャラクター原案はゲーム版と同じく鳥山明が担当し、主要キャラクターのデザインイラストを描き下ろしています。アニメーション制作は「スタジオコメット」が手がけ、1話から12話までは「りんたろう」と「山田勝久」が総監督を務めました。BGMはゲーム版の作曲家であるすぎやまこういちが担当し、ゲームのBGMをアレンジした楽曲も随所に使用されています。これは使えそうです。
また、第1話のサブタイトルは本放送時に「Level 1 アリアハンの村 別離」と表記されており、話数の表示をRPGのレベルになぞらえるという斬新な演出が取り入れられていました。各話終了後には、RPGの「つよさ」ウィンドウのようなキャラクターのステータス画面が表示される演出もありました(第31話まで)。
さらに放送の裏には重要なプロモーション的意図もありました。放送当時、ドラゴンクエストIV(1990年2月発売)の発売が迫っており、そのタイアップ的な意味合いも含む企画だったのです。実際に第1話の放送は1989年12月2日で、DQ4発売の2ヶ月以上前にスタートしています。
制作においてもう一つ注目すべき点は、1話から登場する衣装のデザインです。アベルやティアラの衣装は、ゲーム版ドラクエのような中世ヨーロッパ風ではなく、ラテンアメリカの民族衣装をモチーフにしているのが特徴です。
以下の参考ページでは、本作の制作経緯やスタッフ情報が詳しくまとめられています。
Wikipedia「ドラゴンクエスト(アニメ)」 — スタッフ・制作背景・放送リストなど網羅的な情報が掲載
「ゲームのドラクエIIIのアニメ化」と思って視聴すると、多くの違いに驚くことになります。これが基本です。
まず、ゲーム版ドラクエIIIの主人公はプレイヤーが自由に名前をつけられる無名の勇者ですが、アニメでは「アベル」という固有の名前と、しっかりしたキャラクター性が与えられています。実は後のドラゴンクエストV(ゲーム本編)では、主人公のデフォルトネームが「アベル」に設定されており、このアニメからの影響が指摘されています。
第1話の舞台「アリアハン」はゲーム版DQ3にも登場しますが、世界観やストーリーはオリジナル要素が非常に強く作られています。ゲームの「ゾーマを倒す旅」とは異なり、アニメでは「大魔王バラモスに攫われたティアラを救う旅」が軸になっています。
呪文の効果もゲームとは大きく異なります。たとえばゲームでは「バギ」は敵全体を攻撃するつむじ風の呪文ですが、アニメでは「閃光弾」のような効果になっています。「ヒャド」は冷気の攻撃呪文ですが、アニメでは食らった敵が全身凍結して粉砕されるという非常に強力な一撃必殺に近い描写になっています。
ゲームのルールを引き継いでいる点もあります。たとえばモンスターが「宝石から生み出される」という設定は、ゲームで戦闘後にゴールドを入手することを説明するために考案されたものです。宝石モンスターを倒すと宝石に戻り、それが通貨代わりになるという工夫は、ゲームとアニメを巧みに結びつける設定と言えます。
| 比較項目 | ゲーム版DQ3 | アニメ版(勇者アベル伝説)|
|---|---|---|
| 主人公名 | 自由設定(無名の勇者)| アベル |
| 目的 | ゾーマを倒す | ティアラを救う |
| 衣装デザイン | 中世ヨーロッパ風 | ラテンアメリカ民族衣装風 |
| 呪文の効果 | ゲームルール通り | オリジナルアレンジ多数 |
| 死亡・蘇生 | 教会で蘇生可能 | 蘇生呪文なし・死は永続 |
第1話を視聴したとき、多くの人の記憶に強く残るのがエンディングテーマです。徳永英明が歌う「夢を信じて」は、徳永氏のシングルの中でも最高の売り上げを誇る人気曲です。
この曲の誕生には意外な裏話があります。「夢を信じて」はアニメのタイアップ曲として制作されたものでしたが、徳永氏自身の作詞ではないため、シンガーソングライターとしてのプライドに傷がつく形になってしまいました。長い間、徳永氏はこの曲を「自分の曲」と認めることができなかったと言われています。
ところが2013年のNHK紅白歌合戦で、徳永英明はついにこの「夢を信じて」を披露しました。約24年越しに和解したことになります。痛いですね、その複雑な葛藤は。しかし今では誰もが認める名曲として定着しており、第1話のエンディングでこの曲が流れる瞬間は、当時の子供たちの心に深く刻まれています。
また、第1話から第26話まで流れたEDテーマのもう一つの注目点として、ゲームのBGMである「序曲」「冒険の旅」などのアレンジ版がBGMとして使われていた点があります。ただし、著作権の関係からサウンドトラックCDにはすぎやまこういち作曲のゲーム曲はほとんど収録されていません。これは今でもファンの間で語り継がれる「惜しい事実」です。
音楽面での作り込みは、第1話でも存分に発揮されています。バラモスの登場シーンや飛行要塞が村を急襲するシーンでのBGMは、当時の子供に大きな緊張感と興奮を与えたことで知られています。
アニヲタWiki「ドラゴンクエスト勇者アベル伝説」 — テーマソング・キャラクター詳細・打ち切りの経緯などが詳しく解説
ゲームを知るファンにとって、この第1話で最も驚くのが「エスターク人」という独自設定の登場です。
ゲーム版でエスタークは「眠れる魔神」として知られる強大な存在ですが、アニメ版では全く異なる扱いをされています。アニメでは「エスターク人」という古代文明の担い手として描かれており、世界制覇の野望を持ちながら「水の汚染」によって滅んだ超古代文明人という設定になっています。その残留思念が集合し、バラモスという存在を誕生させたというのが本作のオリジナル設定です。
つまりバラモスは、何百年もの恨みと欲望が凝縮した「怨念の産物」として描かれており、ゲーム版とは根本的に異なる存在なのです。第1話ではこの背景がサラッと語られますが、のちの物語の核心に直結する非常に重要な設定です。
もう一つの独自設定は「死せる水」です。バラモスは世界を「死せる水」で汚染しようとしており、第1話でも飛行船から湖に汚染物質が流し込まれるシーンが描かれます。これは「環境破壊」というテーマを盛り込んだ、1989年当時としてはかなり先進的な社会的メッセージを持つ設定でした。
さらにこの作品では「死亡したキャラクターは二度と生き返らない」というシビアなルールが設定されています。ゲーム版では教会で蘇生できますが、アニメではその描写が存在しません。第1話の段階ではまだそのルールの重さを感じる場面は少ないですが、物語が進むにつれてこの設定が重大な意味を持ってきます。これだけ覚えておけばOKです。
この独自設定の積み重ねが、1989年放送のアニメとしての「勇者アベル伝説」を単なるゲームの販促映像ではなく、オリジナルストーリーとしての見ごたえある作品に仕上げている大きな理由です。
35年以上前の作品でありながら、現在でも複数の動画配信サービスで視聴できる点は、このアニメの根強い人気を示しています。
現時点(2026年3月)で最も手軽に視聴できるのが「U-NEXT」です。U-NEXTでは全42話を見放題で配信しており、31日間の無料トライアルを利用すれば1話から最終話まで一切費用をかけずに視聴することができます。同様に「dアニメストア」や「DMM TV(30日間無料)」でも全話見放題配信が確認されています。
注意が必要な点として、「第1話のサブタイトル」についての混乱があります。本放送時のタイトルは「Level 1(アリアハンの村 別離)」と表記されましたが、DVD化・配信化の際に「第1話:アリアハンの村 別離」と副題が付け加えられています。本放送当時は「ドラゴンクエスト」というタイトルのみで、「勇者アベル伝説」という副題はDVD化(2006年10月)の際に初めて使われたものです。これが条件です。
また、1991年に発売されたVHS版「勇者伝説」(全6巻)はシーンが大幅カットされた編集版であり、全話収録ではありません。現在の配信版は基本的に本放送版ベースのDVD-BOX(全43話、合計1095分)に準じた内容となっています。
配信サービスを選ぶ際のポイントは次のとおりです。
第1話だけをまず確認したいのであれば、無料トライアルのある配信サービスを利用するのが賢明です。なお、以前は一部の地域で再放送も行われていましたが、2009年には千葉テレビでの再放送が6話放送後に「放送権利の問題」で突然打ち切りになった前例があります。権利関係の複雑さを踏まえると、安定して視聴できる正規の配信サービスを利用することをおすすめします。
U-NEXT「ドラゴンクエスト勇者アベル伝説」配信ページ — 全42話を見放題配信中。無料トライアルで視聴可能